鶏肉、大根、ニンジン、コンニャク、ゴボウなどがよく使われる。サツマイモやサトイモを使うこともある
昆布出汁やカツオ出汁と麦味噌を使うことが多い。お店では鶏ガラスープを加えたり白味噌を使ったりの工夫もなされている
具材を1cm角ほどに切った後、下ゆでするなどして下ごしらえする。出汁で煮込み、味噌で味を整え、ネギなどを加える
目の前の桜島が一望できる『鹿児島サンロイヤルホテル』。桜島は一日の中で七つの色に移り変わるのだという。ホテルの和食処『日本料理 七彩』の名前にはそんな意味合いが込められている。
春夏秋冬を表現した会席料理、鹿児島の郷土料理…和食部料理長・山下一敏さんが作る和食にも、手間をかけて作られるからこその彩りと輝きがある。鹿児島の家庭料理である『さつま汁』も繊細に作られている。山下さんは「『さつま汁』は具材を出汁で煮て、味噌で味付けするだけです」とお話してくださったが、とても丁寧にしっかりと作られている。
まず、使っている具材も、こちらならではのもの。
「材料は鶏もも肉、大根、ニンジン、ゴボウコンニャク、うす揚げ、(水で戻した)シイタケですが、できるだけ鹿児島産の食材を使っています。鹿児島の地鶏は、肉汁が多く旨味が強いことが特徴です。繊維が細かいので歯切れがよくて、火を入れても美味しいですね。鹿児島の大根は煮崩れしにくく、旬は冬から春にかけて。新鮮なものがある季節は、もちろんそれを使いますし、その他の季節では、急速冷凍することで旨味を閉じ込めたものを使っています」。
具材の下ごしらえにも手間がかかっている。
「すべての具材を小さくサイコロ状に切り、具材ごとに下ゆでして水にさらします。うす揚げは熱湯をかけて油抜きしますし、鶏肉にも熱湯をかけて脂分を取り除きます」。
鶏ガラスープは、具材を煮込む出汁にも使われている。
「具材はカツオ出汁と、鶏ガラスープをブレンドしたもので煮込みます。鶏ガラスープを作る時は、アクを取りながら、コトコトと時間をかけてゆっくり煮ていきます。丸一日かかりますね」。
具材を煮込んだら味噌で味付けをするが、味噌も一種類ではない。
「味噌は白味噌7に、米と麦の合わせ味噌3の割合です。白味噌を入れると味が上品になりますね」。
すりおろしたショウガの搾り汁が加えられ、ネギがちらされた『さつま汁』は見た目も味わいもすっきりと上品。まさに職人さんの味だ。地鶏の旨味も、野菜の甘味もしっかりと伝わってくる。
「『さつま汁』は具だくさんでヘルシーですね。身体も温まるので寒い時期にはぴったりの料理です。味噌汁というよりは豚汁に近く、豚肉の代わりに鶏肉が入ったものです。鶏の旨味が『さつま汁』には欠かせない味わいですね。鹿児島産の地鶏は本当に美味しい鶏肉で、いい出汁も出ます。
地鶏をミンチにして山芋と合わせ、つみれにして白味噌仕立の味付けをした料理も作りますが、絶品ですよ」。
『さつま汁』をはじめ、キビナゴ、とんこつ、さつま揚げ…古くから鹿児島に伝わるさつまの味を伝えている山下さん。日々、どんな想いで仕事をされているのだろうか?
「私が作っている味は、師匠から受け継いだもの。そして、その味は師匠から弟子へと、ずっと昔から続いてきた味です。師匠からの教えはしっかりと守りつつ、その中で私なりの工夫を加えていければと思っています。『さつま汁』に関しては、作り方は変わりませんが、鹿児島県産の地鶏と大根を使うことは、私が始めたことですね。それから、毎日の仕事の中で肝に銘じているのは、手を抜いたら絶対にだめだということです」。
その想いは一杯の『さつま汁』にも込められているのだ。
鶏もも肉、大根、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、うす揚げ、(水で戻した)シイタケ。
カツオ出汁と鶏ガラスープをブレンドする。味付けに使う味噌は、白味噌7に、合わせ味噌3の割合
野菜類は別々に下ゆでをし、鶏肉には熱湯をかけるなど、具材ごとに下ごしらえし、出汁で煮込んだ後、味噌で味付けする
『鹿児島サンロイヤルホテル』の和食処。会席料理(3,990円〜)をはじめ和食部料理長・山下一敏さんが丁寧に作る四季折々の鹿児島の旬を楽しめる。また、とんこつやさつま揚げなど鹿児島の郷土料理メニューも充実。コース料理などの椀物として食べられる『さつま汁』は、鹿児島産の地鶏と大根を使い、味付けに白味噌が加えられた上品な味。
住所 | 鹿児島市与次郎1-8-10 鹿児島サンロイヤルホテル2階 |
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電話 | 099-253-2020 |
営業 | 11:30〜14:00/17:30〜21:00 |
休み | なし |
席 | 90席(個室8あり) |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.sunroyal.co.jp |