『山太郎ガニ』の甲羅を取った後、まるごと細かくすりつぶす。そこに水と味噌を加えて混ぜ合わせ、ザルで丁寧に濾す
濾したものを弱火で温める。ゆっくりと温めることによって、カニの旨味が凝縮された、ふわふわの固まりができあがる
より食べやすくするためと、味わいにアクセントをつけるため、すりおろしたショウガとネギがよく使われている
九州、特に宮崎では、オリジナルの焼き肉のタレなどで知られる『戸村グループ』。『戸村グループ』の直営店の一つが『もみじの里 とむら』、自社牧場で育てた牛肉を、自家製のタレで食べる焼き肉が自慢のお店だ。屋外の席で風を感じながら食事をするのも心地いい。
横には川が流れ、秋が深くなると、店名のごとく裏山は紅葉で紅く染まるとのこと。そして、紅葉と同じように、秋に地元の方々が楽しみにされているのが『かにまき汁』だ。
「秋から冬にかけて、産卵のために川を下る『山太郎ガニ』を使って作るのが『かにまき汁』。毎年、準備ができたら『かにまき汁始めました』という紙を貼りますが、涼しくなってくると『かにまき汁はもう食べられますか?』という問合せの電話もかかってきます。北郷の方々が、楽しみに待っていらっしゃる料理ですね。『かにまき汁』だけを食べに来られる方もいらっしゃるんですよ」。
こちらの『かにまき汁』は自社工場で作られている。新鮮な『山太郎ガニ』を細かく砕いて、水と味噌を加えて丁寧に濾す。濾したものは美味しさが逃げないように、すぐに冷凍し、袋詰めにされる。
『もみじの里 とむら』では、それを解凍して温めているというわけだ。温め方には、ちょっとしたコツがある。
「解凍したものを鍋に入れて強火で煮立てていくと、ポツポツと固まりが浮いてきます。そして、すりおろしたショウガを加えて、弱火にしてひと煮立ちさせます。固まりが段々と一体化して大きくなっていきますが、このふわりと浮かんでくる固まりが美味しさのポイントです。最後まで強火で温めると固まりができないんですよね。吹き上がってしまわないように注意が必要です。
そして、固まりができるだけ崩れないように、そっと器に注ぎ、ネギをかけたらできあがりです。
まあ、食べるときはみなさん、その固まりを崩しながら食べられるんですけどね」。
ふわりとした固まりは、カニの旨味の塊でもある。口の中いっぱいにカニの旨味が広がる。
「ショウガの千切りや、そうめんを入れても美味しいです。(北郷よりも北部に位置する)田野の方は、大根の葉を入れたりするようですよ。『かにまき汁』は各家庭で作ったりもします。材料に使うカニの量も味噌の量も違うので、作る人によって味は違いますね。うちの『かにまき汁』はとても美味しいので、私は自分で作らなくてもよくなりました。一度にたくさん作ったものは美味しいですしね」。
田中さんは北郷が出身ではないので、この地に来て初めて『かにまき汁』を食べられたのだそうだ。
「初めて食べた時は、ふわっとした不思議な食感で、カニの味が濃くて…『なんだこれは!』という感じでしたね。独特な味わいがありますが、1度食べるとクセになる方も多いようです。知らない方に伝えるとしたら、カニの風味があって、味噌味で、不思議な食感で…やっぱり食べてもらわないとわからないですね」。
定食類には味噌汁が付いているが、200円プラスすると、かにまき汁にすることができる。そうすることで、定食が、より贅沢なものになりそうだ。
自社工場で作る。新鮮な『山太郎ガニ』を細かく砕いて、水と味噌を加えて丁寧に濾す。濾したものは、すぐに冷凍し、袋詰めにされる
解凍したものを鍋に入れて強火で温め、ポツポツと固まりが浮いてきたら弱火にする。そうすることで固まりは、より大きくなる
温める途中でショウガを加え、器に注いだあと、ネギをかける。薬味ではないが、そうめんを入れても美味しいとのこと
九州では焼肉のタレで知られる『戸村グループ』の直営店。定食類や丼ものなど、どれもボリューム満点でリーズナブルだ。秋は、裏山に広がる紅葉を見ながら、自社牧場で飼育された和牛の焼肉を楽しむこともできる。自社工場で作られる『かにまき汁』(秋~冬の限定商品)は丁寧に温めることで、カニの旨味が凝縮された、ふわふわの固まりを作り出す。
住所 | 日南市北郷町北河内6565 |
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電話 | 0987-56-1129 |
営業 | 9:00~OS16:00(物産販売は~17:00) |
休み | 火曜 |
席 | 室内64席+室外48席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.tomura.com/nakami/momidi.html |