細島港に揚がった新鮮なカツオが使われることが多い。さばいて三枚におろして切り分けた身を、炙った後で小さく刻む
『こなます』に使う調味料は基本的に塩だけ。カツオの味と塩加減が『こなます』の味わいを左右する
刻んだカツオに塩とごはんを合わせ、よくこねる。まるい形に整えた後、表面をこんがりと焼く
細島港に面した『海の駅ほそしま』はレストランと物産館からなる日向市漁業協同組合の直営店だ。店長・平川智幸(ひらかわともゆき)さんと、料理を作るスタッフを代表して小西予里子(こにしよりこ)さんにお話をうかがった。
お二人を前にしてまず驚いたのが、真っ黒に日焼けしている平川さんの姿。「魚が揚がる場所はあそこに見える、ここから100mほど離れた場所です。魚介はそこまで私が受け取りに行くんです。保冷車を使う時もありますが、台車を使って何度も往復することもあるので日に焼けてますね(笑)」。その日に水揚げされた朝獲れの新鮮な魚介を使った料理がレストランの自慢。メニューには『漁師海鮮丼』、『獲れとれ刺身定食』といった料理が並ぶ。カンパチ、ニベ、タイなどその日に出た魚のアラをたっぷりと使った『あら汁』も看板メニューだ。「マグロの胃袋をかき揚げにした『ごんぐりのかき揚げ』も人気メニューですね」。独特の食感と風味があり、焼酎のつまみにもぴったりの一品だ。
メニューに大きく書かれている『こなます』も新鮮なカツオを使い、毎日その日の分だけが作られる。カツオは季節に関係なく水揚げされるが、悪天候などで港に揚がらない日は食べられない時もある。「材料はカツオ、塩、ごはんだけというとてもシンプルな料理ですね。作り方もむずかしいわけではありません。カツオをさばいて、焼いたあと、小さく刻みます。それに塩をしてごはんと合わせてこねてまるめるだけなんです。『海の駅ほそしま』は2008年にオープンしたのですが、その時から『こなます』はあります。ベテラン主婦の方々の経験をもとにした作り方と味わいです。形は昔からまるい形に決まっているようですね。一度にたくさん作るのですが、私は小柄なので、こねるのが大変なんです(笑)」と小西さん。まるめたものを焼けば『こなます』のできあがり。
表面が香ばしく中はもっちり、ほどよい塩加減の中にカツオの風味が広がる。「もちもちしているのは、よくこねているからですね。表面がカリッとしているので余計にそう感じるのかもしれません。私たちの作る『こなます』は味付けがさっぱりしているのでパクパク食べられると思いますよ!」。一般的な焼いた『こなます』と合わせて、まるめたものを油で揚げた『揚げこなます』もある。こちらも、表面全体がよりカリッと軽やかで美味だ。
『こなます』は元々は漁師たちが余ったカツオを使い、船の上で作っていた料理。小西さんにも馴染みの深い味なのだそう。「私の父は漁師でしたし、親戚にも漁師がいたので、小さい頃から『こなます』はよく食べていました。日向市の中でも漁師町である細島だけで食べられている郷土料理ですね。昔は漁師が作っていましたが、今は家々で作られる家庭料理になっていますね。お店にいらっしゃるお客さんは平日は地元の方、お休みの日は地元以外の方が多いのですが、地元の方はあまり『こなます』は注文されないですね(笑)。家で食べているからなのでしょう」。メニューの『こなます』の紹介ページには『細島の郷土料理!愛情バクダン!』と書かれていた。かつて漁師の大きな手でにぎられていた『こなます』は、今は“母ちゃん”たちのやわらかい手でにぎられている。
日向市漁業協同組合の直営店ということもあり、目の前の細島港に揚がる新鮮なカツオを使う。さばいて切り分けた身を焼いて刻む
使う調味料は塩のみ。さっぱりした味つけにすることで、カツオの風味をより引き立たせている
刻んだカツオに塩とごはんを加えてよくこねる。丸くまるめて焼く。焼かずに油で揚げた『揚げこなます』も提供している
細島港に面した日向市漁業協同組合の直営店で、その日に水揚げされた新鮮な魚介を使った刺身や丼物、ごんぐり(マグロの胃袋)料理などが食べられる。その日の分だけ毎日作る『こなます』も新鮮なカツオを使い、調味料は塩だけのさっぱりした味付け。定番の『焼きこなます』の他に、油で揚げた『揚げこなます』もある。魚介や加工商品を販売する物産館も併設。
住所 | 日向市細島769-4 |
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電話 | 0982-52-0771 |
営業 | レストラン 11:00~OS14:30(※物産館 10:00~17:00) |
休み | 月曜(祝日の時は営業) |
席 | 62席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.jf-hyugashi.jp |