表面のぬめりを洗い落とした後、ハサミや包丁を使って腹の部分を切り、内臓などをくり抜くが、そのやり方は様々
麦味噌が使われることが多いが、他の味噌と合わせたり、調味料が異なったり、野菜を混ぜたりと作り手がアレンジを加える
あらかじめ身を焼いておいてから仕上げる焼き方、生の状態からじっくりと焼く焼き方などがある
店内に入るとすぐに目に入る生け簀には、五島に揚がった魚が泳いでいる。その中には店主・佐野誠さんが釣ってきた魚がいることもあるのだそうだ。
「はこふぐが泳いでいる時もありますよ。けれど、はこふぐは弱くて長生きできない魚なので、長い時間生け簀にいることはありません。表面のぬめりに毒があるんで、一匹二匹ならいいですが、たくさん生け簀に入れておくと、他の魚が死んでしまうんですよ。漁師さんの話によると、9月〜10月くらいはたくさん獲れるのですが、やはり一緒にしておくと他の魚が死んでしまうそうです。だからすぐに別々にして触れ合わないようにしていますね。それから、はこふぐは釣りに行っても釣れない魚ですね(笑)」。
夜の部の準備もあり、活気のある厨房で『はこふぐの味噌焼き』を作っていただいた。
「表面のぬめりをタワシでよく落としたら、はこふぐを横に倒して、腹の皮を包丁で切っていきます。そして、中の内臓などをくり抜くように取り除いてきれいにします。見てください、皮にくっつくように骨と身がついているんです。背中の部分に特に身がついています。おもしろい魚ですよね。
これをまず焼きます。背中についている身に火を通すということですね」。
身がほどよく焼けるまでの間に、中に詰める味噌の準備をする。
「自家製の麦味噌にみりん、酒を加えてフライパンで熱しながら混ぜます。そこに、はこふぐの生臭さを取るためにショウガ汁を加えます。刻んだネギをちらし、一味唐辛子を入れて特製味噌の完成です。味噌を作っている間に身がちょうどいい具合に焼けてますね」。
この特製味噌だけでもいい香りだ。
身が焼けたところで、特製味噌を詰める。
「内臓などをくり抜いて器のようになったはこふぐの中に特製味噌を詰めて、今度は背中のほうを下にして天火で焼きます。
身にも味噌にも既に火は通っているので、殻に焦げ目がついたら出来上がりです。焼きすぎると六角形のウロコが外れるというか、底がぬけたようになったりもしますからね」。
味噌がぐつぐつとしている『はこふぐの味噌焼き』にはスプーンも添えられる。
「アツアツの味噌だけも美味しいですが、スプーンで下のほうからすくって、身と絡ませながら食べていただくといいですよ」。
香ばしくて濃厚な、独特の香りだけでも焼酎が一杯飲める。ネギの風味とピリ辛味の味噌が絡まる身をいただくと、焼酎は二杯、三杯とすすんでいく…。皮の内側についた味噌と身はスプーンでこさぎとり、最後は皮だけとなった。
「独特のクセはありますが、濃厚な味わいで身はプリプリ。焼酎にすごく合いますし、男性は特に好きみたいですね。ごはんにも合いますね。最後は殻をバラバラにして、舐めながら焼酎を飲むと旨いですよ(笑)」。
大阪で料理修行をされた佐野さんは、地元・五島に帰ってきてから『はこふぐの味噌焼き』を知ったのだそう。
「なんと焼酎に合う料理なんだろうと思いましたよ。あまり食べる習慣のなかったはこふぐを、最初に食べ始めたのは、漁師さんたちだったようです。火であぶりながら豪快に食べていたのではないでしょうか」。
漁師さんたちから始まった『はこふぐの味噌焼き』を佐野さんも作り続けている。
「はこふぐは常に準備していますが、夏前などは一日に10匹くらいしか手に入らない時もありますね。ですから、団体さんに食べていただくのは難しかったりはします」。
お店を始めた頃と比べて、味付けには変化があるとのこと。
「とてもシンプルなものになりましたね。初めはタマネギを入れたり、キノコを入れたりもしていたのですが、今は入れていません。味付けは味噌と酒とみりんだけですからね。臭みを取るためにショウガとネギを入れますが、それも最小限。素材をとても大切にした料理に変わってきました。はこふぐには元々旨味と甘味がありますから。9月から12月は特に濃厚な味わいが楽しめますよ」。
表面を洗い内臓を取り除いたら、まずは焼く。背中の内側にくっついている身にあらかじめ火を通すためだ
自家製の麦味噌にみりん、酒を加えてフライパンで熱しながら混ぜる。そこにショウガ汁、刻んだネギ、一味唐辛子を加える
はこふぐの殻に特製味噌を詰め、天火で焼く。身にも特製味噌にもあらかじめ火が入っているので、軽く焦げ目がつけば出来上がり
「五島は海に囲まれた魚介類の宝庫です。本物の魚の味を提供したいと思っています」。店内にある生け簀の中には、漁師が届ける魚はもちろん、店主・佐野誠さんが釣ってきた魚が泳いでいることも。珍味『はこふぐの味噌焼き』や五島に揚がる新鮮な魚介類を使ったメニューに加え、五島牛や五島うどんなどの味も楽しめる。刺身盛合せ1,500円〜。
住所 | 五島市福江町10-5 |
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電話 | 0959-74-3552 |
営業 | 11:00〜14:00/17:00〜OS22:00 |
休み | 不定 |
席 | 100席 |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.shinsei.asia/ |