九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

ごんぐりの下ごしらえ

生、もしくは解凍したごんぐりをよく洗い、サツマイモと一緒にゆでてやわらかくした後、食べやすい大きさに切る

野菜

タマネギを入れることが多いが、ネギ、ニンジン、ショウガ、ニラなど各家庭ごとに使う材料には違いがあるようだ

味付けと煮込み方

酒、砂糖、日南で好まれる甘めの醤油などで甘辛く煮込む。味噌を入れる家もあったり、甘さの違いがあったり家ごとに千差万別

語り 港の駅 めいつ 谷村勝徳の「ごんぐり煮」

谷村勝徳さん

目井津港の目の前にある『港の駅めいつ』。南郷漁業協同組合が運営する直営店は平成17年にオープン。売店とレストランを併設し、取り扱っている魚介類が新鮮なのは折り紙付き。美味しい魚介類を使ったボリューム満点の料理を求めて多くの人でにぎわい、休日には長い行列ができるほどだ。

ごんぐりは、外側のひだひだがちょっとグロテスク

刺身や海鮮丼など新鮮な魚介類を使ったメニューが並ぶ中、『ごんぐり』もしっかりとメニャーに書かれている。
「『ごんぐり』はマグロの胃袋ですが、こぶしをぐりぐりしているような形だから、そう呼ばれるようになったのかもしれません(笑)。昔は、マグロ船が港に帰ってくる度に、あちこちの家庭で煮付けにして食べていたんですよ。その他、マグロは心臓、レバー、魚卵なども美味しい肴になりますね」と支配人の谷村勝徳さん。調理場で『ごんぐり煮』の料理法について教えていただいた。
まずは下ゆでから。船の上で冷凍されたものを解凍した『ごんぐり』は、形的にはゴーヤのようでさわると弾力がある。表面にぬめりがあるので水でよく洗いおとして、30分ほどゆでてフタをしておいておく。

「この下ゆでをする時に“すごい”匂いがするので、下ゆでするのは別棟の加工場でやってます。この作業を調理場でやると店内にその匂いが充満してしまいますから。昔は、ごんぐり煮を作っている家は、その匂いですぐにわかるほどでした(笑)」。

水に、酒、ざらめ、味噌という順番に加えて煮汁を作る

元々は袋状だったごんぐりを輪切りのように切ったら、煮込みの準備だ。水に酒、みりん、ざらめ、麦味噌を加え一煮立ちさせ、そこに切っておいた『ごんぐり』を入れる。ショウガのみじん切りを入れて30ほど煮込み、最後にタマネギとニンジンを入れて弱火で少し煮たら火を止める。タマネギとニンジンには余熱で火を通すという感覚だ。

切ったごんぐりを投入

「ネギを入れる家も多いですね。タケノコを入れたりもします。入れるものや味付けは家々で少しずつ違いますし、親から子どもへと伝わっていく味ですね。『めいつ』では、あまりやわらかくは煮ずに、少し歯ごたえがある『ごんぐり煮』にしています。炊いてすぐよりも1日くらい置いておいたほうが美味しくなります。煮物以外では、『ごんぐりの唐揚げ』も美味しいですね」。

ごんぐりを煮て味をしみ込ませていく

できあがった『ごんぐり煮』は適度な歯応えの中、ショウガの風味が広がり甘辛い味だ。
「『ごんぐり煮』は少し味が濃い料理ですね。元々は、海の男たちが船の上で作って食べていたんじゃないでしょうか。マグロの身の鮮度を保つために、マグロが揚がったら、すぐに内蔵を取り出していたわけですから。また、時間が経つと、『ごんぐり』は匂いがきつくなってしまいます。鮮度が良い物で作らないと、美味しく食べられないものなんですよ」。

味噌が焼けていい香りが漂う

今では冷凍技術が発達したおかけで、『ごんぐり煮』はいつでも食べられるというわけだ。焼酎によく合う味わいに食もすすむ。
「見た目よりも意外と美味しいでしょ?マグロの身よりも好きだという人もいるんですよ。この美味しさは、食べてみないとわからないですね。だから、私たちは定食の小鉢などにもお付けしています。私たちは、漁協直営の店ですから、魚食の普及を目指すとともに、この地域の情報発信の場でありたいと努力しています。『ごんぐり煮』も多くの方に知っていただきたいですね。南郷を代表する郷土の味なのですから!!」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

ごんぐりの下ごしらえ

表面をよく洗ってぬめりをとり、30分ほど下ゆでしてフタをしておいた後に切る。“すごい”匂いがする下ゆでは、別棟の加工場で行なう

野菜

ショウガのみじん切り、タマネギ、ニンジン。ショウガはごんぐり一緒に煮込むが、タマネギとニンジンは最後に入れ、弱火で少し煮た後は余熱で火を通す

味付けと煮込み方

水に酒、みりん、ざらめ、麦味噌を入れて一煮立ちさせた後、ごんぐりを入れて煮る。ざらめと麦味噌がより深いコクを与える

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港の駅 めいつ 新鮮な魚介類が味わえる漁協直営レストラン

目井津港に臨む漁協直営レストラン。「魚の鮮度とボリュームは負けません!!」と支配人の谷村さん。新鮮な魚介類を使った、『黒潮刺身定食』980円、『大漁にぎり寿司定食』1280円、『海鮮丼定食』980円などが人気メニューだが、『ごんぐり』料理、『マグロの目玉煮』他、地域色豊かな料理も食べられる。海産物の加工品などの土産物が並ぶ販売コーナーも併設。

『ごんぐり煮』は1人前400円。※写真は3人前。定食の小鉢で味わうこともできる。販売コーナーでは持ち帰り用のパックに詰められた『ごんぐり煮』300円も販売
『ごんぐり唐揚げ』400円。『ごんぐり煮』とは違った食感にするため切り方を少し変えている
アツアツごはんの上にカツオのヅケをのせ、出汁をかけていただく『かつおめし』は単品800円、定食980円
持ち帰り用の『生・かつおどん』500円。水揚げされた新鮮なカツオをすばやく調理加工した本格かつお茶漬け
休日はいつも満席になる店内。窓からは目井津港が見える

港の駅 めいつ

住所 日南市南郷町中村乙4862-9
電話 0987-64-1581
営業 10:30~OS14:40
休み 月曜(祝日の場合は翌日)、第3火曜
50席
カード 不可
駐車場 あり
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