豚肉、ゴボウ、モヤシ以外は、何を使ってもかまわない。彩りや季節を考えて、作り手が工夫する。家庭では残り物が使われることも
醤油、酒、ミリンなどとともに出汁を使うことが特徴。甘味をつけるため砂糖が多めに入るのも長崎ならではだ
細切りにした具材を炒め、調味料を入れて炒め煮する。モヤシは歯応えを残すために最後に入れる
長崎大学病院近くにあるスーパー『浜口食彩館』の一角で、惣菜や弁当などを製造・販売している『中村惣菜』。煮物、揚げ物など手作り惣菜が並ぶなか、毎週水曜には『浦上そぼろ』も販売されている。
「『浦上そぼろ』は晩ごはんのおかずにもなるし、弁当のおかずにもなるし、酒の肴にもなりますね。家庭料理なので、惣菜として売っている店はあんまりないんじゃないでしょうか?」と店主・中村健二さん。 中村さんのお母様・良子さんを中心に作る『浦上そぼろ』は素朴で懐かしい味わいだ。
材料は豚肉、ゴボウ、モヤシ、人参、コンニャク、ピーマン。緑色が鮮やかなピーマンは、彩りのためでもある。
良子さんが作り方を教えてくれた。
「私の母がよく作ってくれてましたし、作り方も習いましたね。まず、すべての材料を同じくらいの大きさに細切りします。この切り方のことを“そぼろ”と言うみたいですね。まず豚肉を炒めて、ゴボウ、人参、コンニャクと順番に加えて炒めます。火が通ったら、酒、ミリン、砂糖、醤油を加えて味付けします。一煮立ちしたら、モヤシを入れ、最後にピーマンを入れて軽く炒めたらできあがりです」。
『浦上そぼろ』を作るコツを尋ねてみると…
「コツは美味しく作ることですね。家庭料理だし、私が作れるくらいだから、誰でも作れますよ(笑)。ただ、たくさん作ったほうが美味しくなるかもしれません。私たちは、1回にゴボウを1kg使ったりしますからね」。
豚肉の旨味の中に、甘辛く濃いめのしっかりした味わいが広がり、ごはんにも焼酎にもよく合う。
「中心となる材料は豚肉とゴボウとモヤシですね。ゴボウのキンピラとかだと、子どもはあんまり食べませんが、豚肉が入ってるからか子どもも好きみたいですね。家庭では豚肉をたくさん入れたり、インゲンとかタケノコとかを入れたりもしますね。『浦上そぼろ』は日常的に作られる家庭料理なんですよ。私は家でもよく作って食べますよ」。
そんな『浦上そぼろ』は、健二さんも大好きな味。ずっと作り続けていこうと感じているのだという。
「僕も小さい頃からよく食べてました。そんなに難しい料理ではないですし、手作りのとてもやさしい味で、母の味というよりもおばあちゃんの味というイメージなのかな。長崎では給食に出ていたりもしますが、次の世代にも伝えていかなければならない味ですね」。
豚肉、ゴボウ、モヤシ、人参、コンニャク、ピーマン。緑色が鮮やかなピーマンが入ることで彩りも華やかになる
酒、ミリン、砂糖、醤油で味付け。砂糖と醤油をきかせて、甘辛くしっかりとした味わいに仕上げている
まず豚肉を炒め、ゴボウ、人参、コンニャクと順番に加えて、調味料を入れて味付け。その後、モヤシとピーマンを入れて軽く炒める
長崎大学病院近くにあるスーパー『浜口食彩館』の一角で、惣菜や弁当などを製造・販売する惣菜店。煮物、揚げ物、弁当などすべて手作りで、肉じゃがと高野豆腐の中に魚のすり身を入れたものは定番の人気商品だ。毎週水曜には豚肉、ゴボウなどを甘辛く炒めた『浦上そぼろ』も販売。やさしい味わいでファンも多い。