大分市の中心部に位置する府内町に、2007年にオープンした『創作DINING　わびさび』。　1階は全室個室（2階は団体もOKな広間）という和モダンのプライベート空間で落ち着いた時間を過ごすことができる。メニューに並ぶ料理は和食をベースにおきつつ、イタリアン、フレンチなどの手法も取り入れた独創的な創作料理。使われている食材は、地元大分県産を中心に厳選されたものだ。
「私たちが一番大切にしているのは、いかに手を加えて美味しい料理を作り出すかではなく、どうやったら食材自体の美味しさを引き出せるかです。そのためにいわゆる和食、イタリアンなどの料理法にはこだわりません。食材自体の美味しさを生かし、引き出していく中で、お客様に驚きを感じていただきたいですね」。

そうお話してくださる料理長・久保智弘（くぼともひろ）さんの頭の中は、常に素材の美味しさを引き出す料理のことで一杯だ。
「フォアグラと大葉のソース、アクアパッツァと酒蒸しの融合など、様々なことができますね」。

『しいたけの炭火焼き』はまさに素材の味そのものといえる一品だ。
「大分県産の原木しいたけは素晴らしいですから、『しいたけの炭火焼き』は安心して出せる料理ですね（笑）。県外の方やまだ食べたことのない方には、大分県産のしいたけをおすすめしていますよ」。

焼くところを見せていただいた。生しいたけは大きく肉厚であるとともに美しい形をしている。
「かさがひらく前の『どんこ』とよばれるものを使っています。生しいたけは炭火焼きに使うだけですね。いしづきを落とし、軸を切ります。まず、かさの裏側を炭火で焼きます」。

「炭火の強さを見ながらひっくり返してかさの表側を焼きます。ひだの部分にお酒をふると、お酒としいたけから出るエキスがぐつぐつとしながらまざりあっていきます」。

「お酒をふるとコクが増しますね。軸は素上げして塩をふっておきます」。

いい香りが漂う中、焼き上がったしいたけを切り、皿の上にのせる。素上げした軸、カボス、ネギ、ショウガを添えて盛付けし、しいたけの上に削り節をのせればできあがりだ。

カボスを絞り、久保さん手作りの特製ポン酢につけて食べる。
ポン酢の爽やかな酸味の中、やわらかな食感、香ばしさとともにしいたけのエキスが口の中に広がる。軸も貝柱のような独特の食感の中に濃厚な旨味を感じられる。
「炭火焼はしいたけの中心部にまで火を通していますが、ジューシーさが損なわれないように、焼き過ぎないことが大事ですね。天ぷらも美味しいですよ。メニューにはありませんがリクエストがあればお作りします」。

食材が豊富な大分県は料理人にとって魅力的な場所であるという久保さん。
「大分は海も川も山もあり自然が豊かで、魚、肉、野菜と食材も豊富です。料理人として楽しいですね。豊富な食材の中で、やはりしいたけの人気が根強いと感じています（笑）。大分ではしいたけ出汁を使うことも多いですし、しいたけは多くの方に馴染んでいる味わいなのでしょうね」。