欠かせないのは落花生。他にはゴボウ、大根、ニンジン、サトイモ、コンニャクなど。鶏肉が入ることも多い
調味料は醤油、砂糖、みりん、酒など。昆布出汁、落花生から出る出汁も味わいに深みを与えている
落花生は下ゆでして殻から外す。それ以外の材料は1cm角に切って下ごしらえする。鍋に材料、出汁、調味料を加えて煮込む
『和元』は気軽に利用できる雰囲気の居酒屋さん。どのメニューの値段も決して高くない。しかし、厨房では料理人の皆さんが、しっかりとした料理を作られている。
「新鮮な食材を使い、和食の職人4人で料理しています。気軽にご利用いただけるお店ですが、味は本物です。手づくりで真心を込めた料理をお出ししたいと思っています」。
総料理長・鴨川美文さんは、そうお話してくださった。その想いは『にごみ』にも込められている。『にごみ』の材料として欠かせない落花生。大村では、ゆでた落花生が売られているため、『にごみ』作りには、それが使われる場合が多いが、こちらでは殻付きの生の落花生をゆでることから行なっている。
「塩ゆでするのに1時間くらいかかりますね。ゆであがった後、1つずつ殻をむかないといけないので、なかなか手間がかかります(笑)。ちなみに、塩ゆでした落花生の殻付きのものを『ゆでピー』としてメニューにのせています。つまみとしてよく出ますよ。枝豆よりも人気があります。ゆでた落花生は、大村では普通に食べられているものなんですよ」。
『にごみ』の落花生以外の材料は、レンコン、サトイモ、ニンジン、生シイタケ、タケノコ、コンニャク、厚揚げ。すべての食材を切った後で下ゆでする。
「食材ごとに火が通る時間は違いますから、それぞれ別々に下ゆでしています。そして、すべてを合わせてコトコトと1時間から1時間半ほど煮込んでいきます。味付けは砂糖、みりん、地元長崎で造られた濃口醤油と薄口醤油。シンプルな味付けですね。煮込んだ後、一晩寝かせると味が染み込みますので1日目よりも2日目のほうが、より美味しくなります」。
できあがった『にごみ』をいただく。甘めの味わいの中に、根菜類の歯応えと味わいが広がる。落花生の歯応えも独特だ。
「『にごみ』は福岡で食べられている『がめ煮(筑前煮)』に似ていますが、落花生が入っているのが特徴ですね。炒った落花生のようにカリッとした感じではないですが、この歯応えがアクセントになっています。大村は甘党の方が多いそうですから、味付けも甘めです。インパクトの強い味ではないですが、やさしい味わいですね」。
『にごみ』は定番メニューには書かれていないが、お通しの小鉢として出されることもあるし、事前に予約しておけば食べることができる。宴会の時などに「『にごみ』をお願いします」と言われることも多いのだそうだ。
『にごみ』は、『大村寿司』と並んでお祝いごとなど人が集まる時に、大村でよく食べられているものです。落花生も、ゴボウも、ニンジンも大村では美味しいものが穫れます。そして、それらを使った『にごみ』は家庭で昔から作られてきたものですから、まさに大村の味、大村の文化なんです。私たちが作る『にごみ』も、家庭のあたたかさや温もりを伝えられるようにしたいし、大村に昔から伝わる味、大村の方々が美味しいと言ってくださる味に近づけたいと思っています。けれど、家々で味は違いますし、素朴だからこそ難しいですね。食べてくださった方が、『うちの母ちゃんが作るのが一番美味しいもんね』と言われたりもします。『にごみ』を愛する方がたくさんいらっしゃって、愛するがゆえに皆さんの目は厳しいです。ライバルがいっぱいいますね(笑)」。
落花生(殻付きの生のものを下ゆでして実を取り出す)、レンコン、サトイモ、ニンジン、生シイタケ、タケノコ、コンニャク、昆布巻き
調味料は、砂糖、みりん、地元長崎で造られた濃口醤油と薄口醤油というシンプルなもの。落花生からも良い出汁が出る
すべての材料を下ゆでした後、調味料を入れて1時間~1時間半ほど煮込む。一晩おくと味が染み込んでより美味になる
雰囲気と値段は気軽に利用できる居酒屋感覚(飲み放題付きのコース2,500円~)だが、和食の職人が作る旬の魚介や野菜を使った本格的な料理を食べられる。郷土料理『にごみ』(要予約・要問合せ)も、生の殻付き落花生をゆでるところから作り始める完全な手作りだ。『大村寿司』をアレンジした太巻き寿司『大村殿様ロール』や、ベーコンの刺身などが付く『鯨盛り合せ』もおすすめの一品。