米、大豆、鶏肉、タマネギ、サトイモ、ニンジン、干しシイタケが基本的な材料。カボチャ、ゴボウなどが加わることもある
醤油、みりんが味のベース。砂糖を使う場合もある。それぞれの材料から出る旨味を生かすため、味付けは薄味だ
鶏肉、野菜を炒める。そこに水に漬け、やわらかくして砕いた大豆、水、米を入れて味付けする。焦げないように混ぜることがポイント
「『かすよせ』は、小さい頃によく食べていましたよ。特に秋から冬ですね、作る時に暑いからね(笑)。簡単に言うと、呉汁に野菜などを入れて練り固めたものと言えばいいのかな。主食でもないし、おかずでもないし、おやつでもないし…不思議な食べ物ですね。このあたりでは、おからのことを『かす』と言ったりするので、昔は、豆腐を作った後のおからで『かすよせ』を作っていたのかもしれませんね。『おしよせ』とも言うんですよ」。
かつては、小学校の給食を作る仕事をされていた藤川つや子(ふじかわつやこ)さん。現在はお家で時折『かすよせ』を作られている。
「仕事をしていた時は、地産地消、郷土料理、地域を見直そうということで、全国学校給食週間(1/24~1/30)に『かすよせ』を作って子どもたちに食べてもらったりしていましたよ。今も家でたまに作ります」。
藤川さんの作る『かすよせ』の材料は、大豆、鶏肉、サトイモ、ニンジン、大根、カボチャ、インゲン、干しシイタケ、もち米。
「ゴボウなどを入れてもいいし、冬の野菜は何でも入れますよ。根菜類が美味しいですからね。ネギを入れることもありますよ。私はもち米を使っていますが、うるち米を使って作られる方もいます」。
作り方は、決して難しくはないが、手間と時間がかかる。
「大豆を水につけて一晩おいておきます。まずこれをミキサーにかけて呉(すりつぶした大豆)を作っておきます。
干しシイタケは水で戻して1cm角くらいの薄切りにします。大根、ニンジンも1cm角くらいの薄切りに、サトイモとカボチャは賽(さい)の目切りに、インゲンは下茹でしてから小口切りにします。材料の準備ができたら、厚手の鍋に油を入れて鶏肉、大根、ニンジン、サトイモ、シイタケを炒めます。
ほどよく火が通ったら、ひたひたになるくらい水を加え、洗って水切りしたもち米と呉(すりつぶした大豆)を加えます。
とても焦げやすいので休みなく混ぜ続けないといけないんです。ここからが暑いんで、冬に作るのがいいんですよね(笑)。サトイモがとろとろになるまで煮込みます。
そして、一度吹き上がったらカボチャを加えて混ぜ、さらに呉(すりつぶした大豆)の泡が出なくなるまで混ぜ続けます。カボチャは煮過ぎるとドロドロになって、全体が黄色くなってしまうから最後ですね。ばあさまたちは、三度ぐらい吹きあがらんと煮えないと言ってましたね」。
ここから味付け。とてもシンプルなものだ。
「味付けは、薄口醤油とみりんだけです。あとは野菜の旨味ということですね。味が整ったらインゲンを加えて練り上げればできあがりです。調味料の量は、仕事の時はちゃんと測ってましたけど、家で作る時は目分量(笑)。どこの家もそうですよね」。
藤川さんと一緒にいただいたが、大豆の粒々感、もち米やサトイモのもっちり感、カボチャのとろり感などが混ざり合った、不思議でやさしい味わいだ。
「小さい子どもから大人まで美味しく食べられる料理だと思います。大豆をどこまで細かくつぶすかで食感が変わりますし、鶏肉を入れずにイリコ出汁で作るのも美味しいんですよ。うちの主人は、だご(小麦粉と水を練ったもの)を入れるのが好きなんですよ」。
『かすよせ』は、各家庭で自由にアレンジされる、まさに家庭料理。そして、実は材料も各家庭と直結している。材料のほとんどは自家製なのだ。
「売るわけじゃないから、畑でちょこっと植えているだけなんですけど、大豆も作っているんですよ。他の野菜も自分たちで食べるくらいはね。今も、このあたりの家はどこでもそうじゃないかな。昔は各家庭で鶏も飼っていましたから、『かすよせ』は家にある材料で作っていた料理なんですよね」。
裏山の畑に案内してくださった藤川さん。
「自然のままの畑で、虫だらけ草だらけよ(笑)。大豆はね、7月に植えて11月に収穫しています」。
自家製野菜たっぷりの『かすよせ』。藤川さんがつくる唯一無二の味だ。
大豆、鶏肉、サトイモ、ニンジン、大根、カボチャ、インゲン、干しシイタケ、もち米。ほとんどが自家製のものだ
調味料は薄口醤油とみりんのみ。野菜の旨味が加わりやさしい味わいとなる。イリコ出汁などを使うこともあるのだそう
適当な大きさに切った材料を炒め、呉(すりつぶした大豆)ともち米を入れて焦げないように煮込み味付けする