ウロコと内臓を取り、背中側から包丁を入れ、身と骨を分ける。三枚おろしのように完全には切らず、一部がつながった状態にする
グルクンに軽く塩をふるだけのことが多い。レモンやシークワサーなどの柑橘や大根おろしが添えられる。ポン酢がつくこともある
温度や揚げ時間によって食感が異なるので、作り手の個性がもっとも出るところ。よりカラッとさせるため二度揚げすることも
扉を開けて中に入ると、カウンターの一角には色とりどりの沖縄の魚がずらり。その中にはウロコや内臓を取り、下ごしらえされた赤いグルクンも並んでいる。『グルクンの唐揚げ』の注文が入ると、グルクンはここから厨房に運ばれて料理が始まる。
「グルクンは、刺身、焼き物、煮物となんでもできますが、やはり沖縄で主流なのは唐揚げですね。沖縄の魚にはあまり季節がないので、グルクンも一年中食べられる魚です。いつでも美味しいですが、卵を産む前のメスは特に美味しいかもしれません。沖縄ではどこでも獲れるみたいで、少し沖に出て船釣りすれば、簡単に釣れますね」。
店主・宇座徳和さんがグルクンに包丁を入れるところから見せてくださった。
「唐揚げにする時は、背中から包丁を入れます。三枚におろすのとは違いますが、身、頭から尾までつながっている中骨、身の3つの部分に分ける感じです。
片方の身は、両端が頭と尾につながっていますが、もう片方の身は頭の方とだけつながっています。これは焼き上がった時の形をイメージしてのものですね。格好良くなるように、作る人で微妙に切り方が違うと思います」。
さばかれたグルクンが油に投入される。
「味付けは塩だけで、全体に塩を軽くふってから揚げます。油に投入する時には、形を整えながらゆっくりと入れます。そうしないと揚がった時にきれいな形にならないのです。
身と骨がきれいに開かないと格好良くないですからね。また、丸ごと揚げると身には火が通っても骨にまで火が通りません。身と骨を分離させて揚げることによって、身に骨にも火が通りやすくなりますね。180度で10分ほどかけてじっくり揚げます。こうすると骨も頭もカリカリに揚がって全部食べられるんですよ。浮かんできたらできあがりです」。
カラリと揚がった『グルクンの唐揚げ』は丸揚げとは違い、立体的なおもしろい形だ。大根おろしとレモンが添えられて盛りつけられる。ほどよい塩味がついているのでレモンの搾り汁をかけるだけでも旨い。大根おろしに少し醤油をたらし、食べても旨い。やわらかな身とカリカリの骨の食感にも箸がすすむ。
「今日揚げた体長20cmほどのグルクンは普通の大きさです。もっと大きくなりますよ。けれど、唐揚げにするにはこのくらいの大きさが丁度良いんです。大きくなると骨も固くなりますからね。骨がやわらかいから、揚がった時に骨がくるりと曲がった形になるわけです。固かったら、尾につながっている部分が途中でちぎれますからね。それから、南の海の魚は深海魚に近いのか、身も骨も頭も、北の海の魚よりやわらかいんです。だから食べやすいんですね。みなさん、何も残さずに食べてくださいますよ」。
座敷席の壁には、料理名が書かれた紙がぎっしり。沖縄の方でなければ、文字だけを見てもまったくわからないものもある。『グルクンの唐揚げ』は、なんとなく料理法の想像はつくものの、運ばれてきた時の形は、初めて見ると驚くに違いない。その形も含めて『グルクンの唐揚げ』なのだ。
ウロコや内臓を取ったグルクンは、身、頭から尾までつながっている中骨、身の3つの部分に分けるようにさばく
全体に塩を軽くふってから揚げる。レモンの搾り汁をかけるだけでも旨いが、添えられる大根おろしに醤油をかけて一緒に食べても旨い
180度で10分ほどかけてじっくり揚げる。そうすることで、骨も頭もカリカリに揚がって全部食べられるようになる
カウンターの一角には魚屋のように、沖縄の魚がずらりと並んでいる。「今日は何が美味しい?」という客からの声に、店主の宇座徳和さんが、刺身、煮付け、塩焼き、塩煮などで、沖縄近海の魚介を美味しく料理する。じっくり揚げられる『グルクンの唐揚げ』は、軽い塩味がつけられていて、そのまま食べても旨い。その他、沖縄ならではのメニューも豊富。