基本的には新鮮な『関あじ』を三枚におろして身を切っていくが、切り身の厚さなど、各店によって特徴がある
大分のやや甘めの醤油をベースに、出汁をブレンドするなどして、『関あじ』の旨味を引き出す特製の刺身醤油が作られている
身の引き締まった『関あじ』。刺身とは違った味わいを感じてもらいたいと、刺身ではないメニューも工夫されている
和のテイストを持ちつつもリゾート感にあふれている『ホテル白菊』。別府温泉の中にあり、2015年に創業65周年を迎えた。ホテルの温泉のお湯はアルカリ性でサラリとしており、湯上がりはツルツルだ。
温泉とともに、新鮮な魚介や豊後牛など地元の食材を使った料理もこちらの魅力。数寄屋造りの静かな個室で和食を楽しめるのが館内にある『日本料理 菊彩香(きくさいこう)』。料理長・天野耕作さんは地元の旬の食材を使い、美しく美味な料理を創りあげている。
「海、山と自然が豊かな大分は、食材も豊富です。魚は本当に美味しいですよ。『関あじ』と『関さば』が有名ですが、タイ、イサキなど『関もの(佐賀関港に揚がる魚介のこと)』はなんでも美味しいですよ(笑)。豊後水道は潮の流れが早い海ですから、『関あじ』は一般的なアジとは違い、筋肉質で身が引き締まっていますね」。
天野さんが手がける料理は一般的な“和食懐石”というよりも、月ごとに変わる“和のフルコース”と呼ぶべきもの。先付けから水菓子まで工夫を凝らした品が一品ずつ運ばれる。その中には、『関あじ』の特徴が一番わかる刺身も付く。
「刺身盛り合せの中には『関あじ』をお付けしています。特製の刺身醤油をつけて、弾力がありコリコリとした食感とともに深い旨味を味わっていただけると思います」。もちろん、お願いすればまるごと一匹を使った活き造りを食べることもできる。
「一般的に魚体が大きいほうが美味しい『関あじ』のようですね。ただ、大きすぎると大味になっている場合もありますが…。天然物ですから一匹一匹状態が違いますので、刺身の場合、身の厚さを微妙に変えることも必要ですね。そして、刺身にはその日に獲れ、活き締めした『関あじ』だけを使っています。締めた後の温度管理も重要で、あまり冷やし過ぎてもよくありません。身をタオルで巻いて木の器に入れるなどして、冷たくなりすぎないようにしています」。
美味しい『関あじ』のために繊細な技と細かな注意が払われているのだ。
刺身が美味しい『関あじ』だが、こちらでは、それ以外の料理も食べられる。
「先付けとして『熟成関あじの酢じめ』をお出しすることもあります。これは『関あじ』に砂糖をまぶし、塩をした酢でしめたもの。
砂糖をまぶすことで塩味と酸味が身にすっと入るのです。それを真空パックして4〜5日ほど寝かせると、旨味が強くなります。新鮮な『関あじ』を、あえて熟成させて楽しむという料理ですね」。
ズイキ(サトイモの茎)、ミョウガなどが添えられ岩のりがかけられた料理は美しく、『関あじ』の新たな美味しさを知ることができる味わいだ。
「『関あじ』のしんじょも美味しいですよ。イワシなどで作ると臭みをとるためショウガを入れたりしますが、『関あじ』には臭みがないので何も入れる必要がなく、『関あじ』100%で作れます。『関あじ』の寿司も美味しいですね」。
神社、祭事など様々な日本の文化に興味があるという天野さん。
「いろいろなものが食文化ともつながっていますからね」。
そんなお話の後に運ばれてきた料理はコンフィ(油や砂糖で煮て風味や保存性を上げる調理法)した後で焼かれたアユ。和食をベースにしつつも柔軟な発想から生まれた一品だ。
「私たちが作る料理は、素晴らしい素材があればこそのものです。様々な素材の味わいを最高のカタチでお届けしたいと常に思っています」。
新鮮な『関あじ』をあえて熟成されることで旨味を引き出す『熟成関あじの酢じめ』。懐石料理の先付けとして出される
別府温泉の中にある老舗温泉宿『ホテル白菊』内にある和食店。料理長・天野耕作さんが手がけるのは、地元の旬の素材を使い先付けから水菓子まで工夫を凝らした月替りの“和のフルコース”だ。『関あじ』の刺身に加え、『関あじ』を使った新しい料理とも出会える。数寄屋造りの静かな個室で、大分ならではの海の幸・山の幸を楽しみたい。
住所 | 大分県別府市上田の湯町16-36 ホテル白菊4階 |
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電話 | 0977-21-2111 |
営業 | 11:30〜14:30/18:00〜22:00 |
休み | なし |
席 | 個室9室 |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.shiragiku.co.jp/ |