九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

イカとさばき方

海水をひいた生簀から取り出したイカは短い時間で調理される。切り目の入れ方や、切る時の幅は、各店で様々だ

刺身醤油

イカの甘味と旨味をより引き出すための刺身醤油は『活き造り』の重要な要素。醤油をベースに出汁を加えるなど工夫される

自慢のイカ料理

『活き造り』以外にも、イカを使った様々な料理が提供されている。定番の天ぷら・塩焼き・煮付けに加え、各店自慢の料理もある

語り 海中レストラン 萬坊 林田宗雄の「イカの活き造り」

林田宗雄さん

橋を渡って、海の上に浮かんでいる船のようなお店へ。階段を降りると窓の外は海。だから『海中レストラン 萬坊』なのだ。時折ゆらゆらと心地よく揺れながら、新鮮なイカ料理をいただくことができる。

海に浮かぶ『海中レストラン 萬坊』

注文が入ると生簀で泳ぐイカが網ですくわれるが、こちらの生簀は水槽のような生簀ではない。料理長・林田宗雄さんに案内していただいた。
「海を網で仕切っている中で泳がせていますから、海そのものですね。漁師さんから直接この中にイカを入れてもらってます。ただ網で仕切っているだけではなくて、エアーを送って、下のほうの海水と表面の海水を混ざり合わせるようにして水温を下げています。それでもイカはデリケートなので、この中では長くても一週間ぐらいしか生きることはできません。だから日々イカの数を考えながら漁師さんからイカを仕入れています。イカの生簀にはイカだけしか入れられないんです。他の魚を入れると、イカが食べられたりすることもあるんですよ」。

生簀のイカを網ですくうと真っ赤になる

生簀の中に網を入れてイカをすくおうとすると、逃げるイカの色が赤く変わった。
「イカは興奮したりストレスを感じると赤くなってしまうんですよ。3月〜11月くらいは、ケンサキイカが美味しい季節、冬場はアオリイカのシーズン。夏前からお盆過ぎくらいまでは、特に身が厚くなりますね。オスとメスは開くと分かりますが、見た目では分かりません。オスもメスも味は変わりませんが、大きいサイズのものがより美味しいようです。通のお客さんからは、『大きいイカをお願いします!』というようなオーダーをいただくこともありますよ」。

生簀からすくわれたイカは、目にも留まらぬ早さで活き造りにされる。
「1分くらいでさばいて、1分くらいでひいて(身を切って)、1分くらいで盛りつけます。数分前まで泳いでいたイカが皿に盛られるというわけですね。それぞれに専門の職人がいて、流れ作業でやっています。お客様が多い時は、生簀からすくっては料理する、の連続ですね」。

イカをしめてさばき、中身を取り出し皮をはぐ

まずはさばき。
「イカのみみ(ヒラヒラの部分)の後ろを切り、中の骨と墨袋を取り除きます。イカは足の後ろの方から墨を吐きますから、注意が必要ですね。それから表面のうすい皮をはぎます。これをはいでおかないと、切る時にうまく切れずにつながった状態になってしまうんですよ。

海水できれいに洗う。身は透明だ

さばく時に身を洗うのに使うのは殺菌した海水です。真水を身にあててしまうと、身がすぐに白くなってしまうんです」。

身の表面に切れ目を入れる

次にひき(身を切る)。
「まずイカの身に対して平行に切れ目を入れます。その切れ目に対して直角方向に切っていきます。切り幅は5mmくらいですね。切れ目を入れるのは、切った時に身がくるりと丸まってしまわないようにするためです。丸まってしまうとイカの姿に盛りつけにくくなりますから。それから、食べる時、切れ目にうまく醤油が染み込みますからね」。

切れ目と直角方向に切っていく

盛りつけも素早い。
「一番下に身をはずした部分を敷いて、その上に切れ目を下側にして切った身を並べます。イカは白色というイメージの方が多いと思いますが、呼子の『イカの活き造り』は透明なんです。私も呼子に来てはじめて生きたイカを料理したのですが、さわった時のハリと、身の透明さには驚きました。透明なうちに召し上がってください! 直前まで生け簀で泳いでいたイカを料理したのですから鮮度抜群です」。

皿の上ではまだゲソがピクピクと動いている『イカの活き造り』。特製の刺身醤油をつけていただく。
「刺身醤油は、甘めの醤油に昆布、カツオ節を入れて2週間ほど寝かせたものです。他の刺身にも使っていますよ。イカのまん中あたりが身が厚くてより美味しいかもしれません」。

コリコリした歯応えは呼子ならではのもの。まろやかな刺身醤油をつけるとイカの甘味もより感じられる。刺身を食べ終わったら、ゲソの部分は天ぷら、塩焼き、煮付けから好きな食べ方を選べるが、8割の方は天ぷらを選ぶとのことだ。
「生でも食べられるイカを使うわけですから、どの食べ方も美味しいですよ。『呼子で食べて、イカがこんなに美味しかったのかと思いました。イカが好きになりました』というお客様の声もよくいただきます。まだご存知ない方は、来ていただいて、呼子の海を見ながらイカを食べてみてください! そうやって呼子の街がにぎわうのが私たちの喜びです」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

イカとさばき方

海を網で仕切った天然の生簀で泳ぐイカを、分担作業により数分で活き造りにする。さばく時に身を洗う水は海からひいた海水だ

刺身醤油

甘めの醤油に昆布、カツオ節を入れて2週間ほどねかせたもの。他の刺身にも使われているとのこと

自慢のイカ料理

名物は『イカしゅうまい』。イカの身のやわらかい部分だけを使い、タマネギや卵などの素材を練り込みふんわりと蒸し上げる

このページを共有・ブックマークする

海中レストラン 萬坊波に揺られながらイカ三昧できる食事処

橋を渡ってたどり着くのは海に浮かんで時折揺れる船のような店。その横に、海を網で仕切った生簀がある。「注文がはいると、生簀からイカをひきあげて、さばく、ひく(身を切る)、盛りつける、と分担した流れ作業で素早く活き造りにします」と店長の林田宗雄さん。『イカコース』をいただけば、活き造りをはじめ、名物の『イカしゅうまい』も楽しめる。

『イカの活き造り』2,100円。イカの活き造りに『ゲソの天ぷら(または塩焼きか煮付け)』、『イカしゅうまい』などが付くお得な『イカコース』は2,625円
『イカの活き造り』をいただいた後は、ゲソの部分を写真の天ぷらなどにしてもらえる
『イカコース』に付く『イカしゅうまい』。ポン酢でいただく。※単品の『イカしゅうまい』は3個630円
写真は水族館のような海中席。海上席からは呼子大橋や海の風景を楽しめる。

海中レストラン 萬坊

住所 佐賀県唐津市呼子町殿ノ浦1944-1
電話 0955-82-5333
営業 平日11:00〜OS17:00/土曜・日祝日
10:30〜OS19:00
※夏休み期間中は、平日11:00〜OS18:00/土曜・日祝日10:30〜OS19:00
休み 不定
176席
カード
駐車場 あり
URL http://www.manbou.co.jp/
お店情報をプリントする

イカしゅうまいなどは取寄せ可能お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧