九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

表面のぬめりを洗い落とした後、ハサミや包丁を使って腹の部分を切り、内臓などをくり抜くが、そのやり方は様々

特製味噌

麦味噌が使われることが多いが、他の味噌と合わせたり、調味料が異なったり、野菜を混ぜたりと作り手がアレンジを加える

焼き方

あらかじめ身を焼いておいてから仕上げる焼き方、生の状態からじっくりと焼く焼き方などがある

語り 活鱗房 仁 谷井清一郎の「はこふぐの味噌焼き」

谷井清一郎さん

お店の入口には、『くじらあります』の暖簾が。寿司カウンターもある和食の店では、長崎の新鮮な魚介を使った料理はもちろん、長崎ならではの郷土料理や卓袱料理などを手頃な価格でいただくことができる。

寿司職人として修行を積み、経験を重ねてきた統括料理長の谷井清一郎さん。豊富な経験を生かして、訪れる方々の様々な要望にお応えされている。
「ご要望があればどんなものでも作りますよ(笑)。『はこふぐの味噌焼き』も、ご希望があった時にご用意する料理です。作り始めから40〜50分と、調理するのに少し時間がかかる料理でもありますから」。

表面を洗った後、腹を切る

下ごしらえは、はこふぐの表面をよく洗うところから始まる。
「表面にはぬめりがあり、毒を持ちますから、タワシなどを使ってきれいに洗います。同じ水槽に他の魚がいると、毒で死んでしまったりすることもありますね」。

次に硬いウロコにおおわれた内臓や身を取り出す。
「背中側は特に硬いので、腹側を開きます。ヒレを取り、おしりから包丁を入れて腹の皮を切り取ります。そして、中に入っている内臓、身、骨を手でかき出します。はこふぐは特殊な魚で、ウロコと中骨が一体化したようになっていますね。身はウロコの内側にくっついている感じです。中はほとんどが内臓で、身は少ししかついていませんね。中身を取り出してきれいに洗うと、まさに箱のようになります。はこふぐは“さばく”ではなくて、“ほぐす”という感覚ですね(笑)」。

味噌は白味噌と麦味噌をブレンドしたもの。この味噌に取り出した身とネギを混ぜ、包丁で叩くように切る

そして、空洞となった腹の中に詰める材料の準備だ。
「はこふぐの身にネギと味噌を混ぜて包丁でたたくように切って細かくしていきます。練るのではなくて切ることで、ネギの香りが際立つんです。味噌とネギが、はこふぐ独特の臭みをおさえる役目をしているんです。味噌は白味噌と麦味噌をブレンドしたもので、この料理専用のもの。

パプリカとシイタケを加える

さらに彩りをよくするために切ったパプリカを入れ、細切りのシイタケを混ぜ、酒と塩を少々入れます。

混ぜ合わせた後、はこふぐの殻に詰める

これをはこふぐの殻に詰めて、180度のオーブンで30分ほど焼きます。味噌がグツグツと煮えてきて、ほどよく焦げ目がついたら出来上がりです」。

オーブンで30分ほど焼いて出来上がり

出来上がった『はこふぐの味噌焼き』は周囲に美味しそうな香りを漂わせる。その香りにひかれて注文したくなるお客さんもいそうだが…。
「はこふぐの手配もありますので、前日までのご予約をお願いします(笑)」。
味噌と身が混ざりあった濃厚な味わいの中で、パプリカやシイタケの食感がアクセント。焼酎がすすむ。

「子どもの味ではなくて、やっぱり大人の味。焼酎が合いますよね。なめろうのように、少しずつなめるように食べながら飲んでいただくといいですね。一匹を2〜3人で食べていただくぐらいが丁度いいと思います。シンプルで素朴な『はこふぐの味噌焼き』は、元々は漁師料理でした。豪快に作って豪快に食べられていたのでしょう。長崎では提供している飲食店も多くて、私が長崎市内の寿司屋で修行していた時も出していましたよ。ただ、その時のほうが今よりも、多くの方々に知られていたかもしれません」。

『はこふぐの味噌焼き』は取寄せなどはできず、ここに来ていただくしかない。
「味だけじゃなくて器も大事な料理ですから。魚そのものを器に使うなんておもしろいですよね。見た目も珍しいので、みなさん喜んでくださいます。実は、生きている時は顔もかわいいし、泳いでいる姿もかわいいんですよ(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

表面を洗い、おしりから包丁を入れて腹を切り取る。中に入っている内臓、身、骨を手でかきだしてよく洗う

特製味噌

白味噌と麦味噌をブレンドしたものに身とネギを合わせて包丁でたたいた後、パプリカとシイタケを加え、酒と塩を少し入れる

焼き方

特製味噌をはこふぐの殻に詰めて、180度のオーブンで30分ほど焼く。味噌がグツグツとしてきて、ほどよく焦げ目がついたら完成

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活鱗房 仁長崎ならではの味をホテルの和食店で

長崎駅からも近いホテルの5階にある和食の店。長崎ならではの旬の食材を生かした会席料理、寿司、郷土料理や卓袱料理を手頃な価格で楽しめる。「多くの方に長崎の良さと、料理の美味しさを知っていただきたいですね」と、総括料理長の谷井清一郎さん。長崎・五島の郷土料理『はこふぐの味噌焼き』は彩りにも気を配って仕上げている。

『はこふぐの味噌焼き』3,000円前後(大きさによる)。※前日までの予約が必要
長崎の郷土料理『ヒカド』1人前600円(写真は2〜3人前)。※要予約。電話で確認を
ランチタイムの『握り寿司膳』は1,000円とリーズナブルだ
夜の『おまかせ会席』は5,000円〜
緑の庭を見ながら食事ができるテーブル席
谷井さんがいつも仕事をしている寿司カウンター

活鱗房 仁

住所 長崎市宝町2-26 ベストウェスタンプレミアホテル長崎5階
電話 095-829-2909
営業 11:30〜14:30/17:00〜22:00
休み なし
140席(80名収容の大広間あり)
カード
駐車場 あり
URL http://n-kaname.com
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