九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

かつお

新鮮なかつおを使うことと、重さ5kg以上の大きなかつおを使うことは各店変わらないが、切り身の厚さは異なる

タレ

かつおの切り身を漬けるタレが味の決め手。日南ならではの甘口の醤油をベースに、各店が工夫を凝らす。漬け方も様々だ

出汁

かつおの切り身がのったごはんにかける出汁は、昆布やかつおをベースにしたもの。その濃さで味わいは変わる

語り 港の駅 めいつ 浜田恭子の「かつおめし」

浜田恭子さん

目井津港の目の前にある『港の駅めいつ』。南郷漁業協同組合が運営する直営店で平成17年にオープン。売店とレストランを併設しており、取り扱っている魚介類が新鮮なのは折り紙付き。美味しい魚介類を使ったボリューム満点の料理を求めて多くの人でにぎわい、休日には長い行列ができるほどだ。

朝から準備に精を出されている、浜田恭子さんに『かつおめし』について伺った。
「『かつおめし』は、人気メニューですね。年中食べられて、いつでも美味しいのですが、特に5月が過ぎたら美味しくなりますよ。『目に青葉、山ほととぎす、初鰹』という句もありますしね(笑)。『かつおめし』は、元々は漁師さんのごはんですね。漁師さんは、かつおの群れが来たら、それを逃さないように、すぐに仕事を始めなければなりません。ですからごはんも早く食べないといけなかったわけです。船の上で食べられていた『かつおめし』が、やがて家庭でも食べられるようになりました。私の父も叔父も漁師だったので、よく家でも食べていましたよ。晩酌でかつおの刺身を作った時に、刺身にしなかった分を醤油などで作ったタレに入れてました。刺身をつまみに飲んでいる間に、漬けが出来上がるというわけです。それをごはんの中に埋めこんでお湯をかけて食べてましたね。刺身が残ったら、それを醤油漬けにしておいて次の日に食べたりもしていました。そうそう、刺身を食べた後、皿の上にかつおの血が少し残っていた時は、それにお湯を入れて、醤油を少し垂らして飲んだりもしてましたよ。身はもちろん、残すとこなく食べていたんです。かつおは身体に良い成分もたっぷり含まれていますしね」。

かつおの身は刺身より厚めに切る

さて、『港の駅めいつ』での作り方は…。
「かつおは、港に朝揚がったものや夜中に揚がってきたものを使っていますから、鮮度が抜群です。横の港から速攻で運ばれてきますから(笑)。うちでは8kg台のかつおを使います。大きいほうが臭みもないんですよ。新鮮なかつおだから、臭みは全くないですね。その新鮮なかつおをしめて、さばいたものをそぎ切りにします。寿司にする時と同じで、刺身より厚めですね。

かつおの切り身に特製ダレをかけてまぶす

切ったかつおの身を器に入れて、特製ダレをまぶします。特製ダレは醤油、みりんなどで作ったものです。家で食べるときは長い時間かけて漬けにもするのですが、ここで作る時は長い時間漬け込むことはしません。長く漬けておくと、身がしまって固くなってしまうんですよ」。

薬味のわさびも一つずつ手で丸めている

『かつおめし』を注文すると、特製ダレをまぶしたかつおの切り身、アツアツのごはん、薬味(わさび・ネギ・すりゴマ)、出汁が運ばれてくる。自分で好きなように食べられるのだ。

かつお出汁を準備する

「最初は刺身のようにかつおの身だけを食べるのもいいですね。その後、ごはんにかつおの切り身をのせ、器に残ったタレをかけ、出汁をかけ、薬味を入れて食べてください。添えている出汁は昆布出汁です。漁師さんたちはお茶をかけて食べていたようですが、私の家ではお湯をかけていましたね。お茶よりお湯が美味しいし、お湯より出汁はさらに美味しいですね(笑)」。

ごはんの上にかつおの切り身と薬味をのせる

ほどよく味がついたかつおの身はそのままでも美味しくかつお丼を食べているよう。その後、出汁をかけていただくとまた違う味わいを楽しめる。かつおの臭みなど一切ない。

出汁をたっぷりかけていただく

「うちで一回かつおを食べてくださった方は、また食べてくださいますね。一生懸命手作りしています! わさびも一つずつ手で丸めてますよ(笑)」。

そんな浜田さんたちが作る“手作りの味”を求めて、昼時はいつも多くのお客さんでにぎわっているのだ。
「おかげさまで忙しくて従業員たちは昼食抜きなんですよ。『かつおめし』を作っている時は、かつおのサクの一番はしっこの、とがった部分の小さな身を食べたりすることもあります(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

かつお

すぐ横の目井津港に揚がる新鮮なかつおをしめて、さばいたものをそぎ切りにする。寿司と同じで刺身より厚めだ

タレ

特製ダレは醤油をベースに、みりんなども加えて作ったもの。かつおの切り身を器に入れて、上から特製ダレをかけてまぶす

出汁

ごはん、かつおの切り身、薬味と一緒に添えられる出汁は昆布出汁。好きなだけかけていただくことができる

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港の駅 めいつ新鮮な魚介類が味わえる漁協直営レストラン

目井津港に臨む漁協直営レストラン。新鮮な魚介類を使った、『黒潮刺身定食』980円、『大漁にぎり寿司定食』1,280円、『海鮮丼定食』980円などが人気メニューだが、『かつおめし』、『ごんぐり』料理(マグロの内臓料理)、『マグロの目玉煮』など、地域色豊かな料理も食べられる。海産物の加工品などの土産物が並ぶ販売コーナーも併設。

カツオのハラジ(腹の部分。マグロで言うならばトロの部分)、ごんぐりの味噌煮、味噌汁、茶碗蒸しが付く『かつおめし定食』980円。『かつおめし』単品は800円
『ごんぐり煮』は1人前400円。※写真は3人前。定食の小鉢で味わうこともできる。販売コーナーでは持ち帰り用のパックに詰められた『ごんぐり煮』300円も販売
取り寄せ用の『かつおめし』冷凍パック1パック(1人前)350円。こちらも完全手作りで、1日20パックくらいしか作れないという品
休日はいつも満席になる店内。窓からは目井津港が見える

港の駅 めいつ

住所 日南市南郷町中村乙4862-9
電話 0987-64-1581
営業 10:30〜OS14:40
休み 月曜(祝日の場合は翌日)、第3火曜
50席
カード 不可
駐車場 あり
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冷凍『かつおめし』を取寄せ可能。電話で問合せ