しめておとなしくした後、お腹の皮のような部分、背中の甲羅、エラの部分などを取り除く。しめ方にもいろいろあるようだ。
基本的に塩、醤油など最低限の調味料しか使わない。つがにそのものの味わいを引き出し、ごはんに染み込ませるためだ。
つがにを生の状態から炊くことが多い。一度外した甲羅の部分にはミソもついているため、一緒に入れて炊く。
店の目の前を流れるのは玉島川、せせらぎの音も心地よい場所に『笹舟』はある。
「雨の日はつがにが川からあがってきて、玄関先までやって来ることもありますよ(笑)」。
中村一郎さんは、豊かな自然に恵まれたこの地の川魚や野菜を使った和食料理を作っている。毎年、秋から冬にかけて美味しくなるのは、つがにを使った料理だ。
「つがには8月から12月にかけて食べられますが、11月の初めに唐津で行なわれる唐津くんちの頃が特に美味しいですね。産卵のために川の上流から海に下っていくつがにを捕まえます。私たちも網を仕掛けたりしますよ。つがには臆病者みたいで、月が明るい夜は自分の影におびえてエサを食べないと言われています。だから、月が明るかった夜の後に獲れたつがには、身がやせてたりもするんですよ。それと、デリケートな生き物でもあって、美味しく食べるには、獲った後、料理する時まで生かしておかないとだめですね」。
つがに飯は、生きているつがにをしめる(動きを止める)ところから始まる。下ごしらえは一匹ずつ手作業だ。
「熱湯をかけると足が取れてしまうので、ぬるま湯でしめます。それから、お腹の皮のような部分を取り、背中の甲羅を取り、口のとこのエラを取ります。感覚としては分解する感じですね(笑)」。
背中の甲羅部分を外すと、色鮮やかなカニミソが見える。甲羅部分にもミソがついているので、ここは捨てずに炊き込む。
「研いだ米に水を入れて、カニをのせていきます。甲羅の部分は米に挿すように埋め込みます。味付けに使うのは濃口醤油、薄口醤油、酒、砂糖。ゴボウやショウガなどを一緒に入れて炊く人もいますが、私はカニだけの旨味を出したいので、カニしか入れていません」。
一升炊きの釜に入れられたツガニはまだ少し動いたりもする。
1時間弱ほどすると、つがに飯は炊きあがる。甲羅の部分に入りこんでいるごはんはほじるようにしていただく。本体の部分はしゃぶるように食べて、堅いところは出す。海のかにとは違う濃厚な香りと風味だ。つがに飯以外には、かに姿煮、かに豆腐、かに汁などで、その味わいを楽しむこともできる。
「姿煮は水と醤油ベースで炊いています。姿煮を作った時の出汁で作ったかに豆腐もかにの風味がいいですね。かに汁は甲羅を外したかにをつぶして味噌と合わせたものをのばした汁です。これも濃厚ですね」。
子どもの頃、玉島川が遊び場だったという中村さん。
「橋から飛び込んだりしてましたし、川遊びしていたら、つがにをふんづけたりしたこともありましたよ(笑)。家が近かったから、捕まえたつがにを持って帰って料理してもらい食べたりもしてました。当時よりも今のほうがつがにの美味しさもよくわかります。独特の香りがいいですね。このあたりは若い頃はなんだか物足りないかなと思っていましたが、修行から帰ってきて改めて地場のものを食べるようになって、この場所の良さに気がつきました。川魚、野菜、山菜…新鮮な素材を使ってどんな料理をしようかと、今はおもしろくてしかたがありません。つがにも玉島川がきれいだから、そのまま料理できるのです。道は広くなったけど玉島川の豊かさは変わっていないと思いますね。つがにの味は玉島川が育んでいるんです」。
ぬるま湯でしめた後、お腹の皮のような部分を取り、背中の甲羅を取り、口のところのエラを取る。一匹ずつ手作業で下ごしらえする
調味料は、濃口醤油、薄口醤油、酒、砂糖のみ。つがに以外の具材は使わない。つがにの味わいを最大限に引き出すためだ
研いだ米に水を入れて、カニをのせ、下ごしらえで外した甲羅の部分は米に挿すように埋め込み、調味料を入れて炊き上げる
玉島川のせせらぎを聞きながら、春は白魚、夏は鮎、秋はつがにと、唐津市七山で獲れる旬の川魚が食べられる。料理に使われる山菜や野菜もすべて七山産だ。ヤマメ料理や、自家製酢味噌でいただく『鯉の洗い』他の鯉料理は、年中食べられる定番の品。『かも鍋』と『ぼたん鍋』は冬場だけの名物料理だ。訪れる前に電話で予約をするのが無難。
住所 | 唐津市七山柳瀬 |
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電話 | 0955-58-2006 |
営業 | 11:00~OS20:00※要予約 |
休み | 水曜 |
席 | 96席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.sasabune.com |