九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

材料

鶏肉、サトイモ、鶏肉、タマネギ、ニンジン、赤カボチャ、ゴボウ、シイタケ、もち米、大豆。鶏肉以外はすべて自家製だ

味付け

調味料はミリン、三温糖、醤油のみで、使う量も多くはない。素材それぞれの味を生かすため、薄めの味付けにしている

作り方

鍋に油を注いで素材を炒め、シイタケの戻し汁を入れて煮る。味付けした後、大豆を挽いたものを加え、焦げないように混ぜ続ける

語り 山都町食生活改善推進員協議会・会長 渡邉美恵子の「かすよせ」

山都町食生活改善推進員協議会・会長
渡邉美恵子さん

山都町北中島地区にある渡邉美恵子(わたなべみえこ)さんのご自宅を訪ね、『かすよせ』についてお話をうかがった。

「昔は年貢があったり、どこも大家族だったりと米は貴重なものでした。『かすよせ』はまわりにある大豆や野菜を使い、米をあまり使わず量を増やすために生まれた料理だったのです。名前の由来はかす(おから)を入れるからというお話もありますし、多くの数の野菜を入れる、つまり“数を寄せる”ことから『かずよせ』と呼ばれ、それが『かすよせ』になったとも言われています。地域ごとに材料や作り方が違いますね。ここ北中島地区の伝統的な『かすよせ』は、煮しめの汁の中にかすを入れてつくるものですね。だんごを入れたりする場所もあるようですよ」。

一昨年は中学校から声がかかり、かすよせを作りに行きました。その時のレシピに沿った『かすよせ』作りを教えていただいた。
「材料は鶏肉、サトイモ、タマネギ、ニンジン、赤カボチャ、ゴボウ、シイタケ、もち米、大豆です。買ったのは鶏肉だけで、他はすべて自家栽培ですよ(笑)」。

材料を切る

鍋に油をひいて切った鶏肉、野菜、さらにもち米を炒める。

鶏肉、野菜、もち米を炒める

干しシイタケの戻し汁を入れ、煮込んでいく。

干しシイタケの戻し汁を入れて煮る

いい具合に煮えあがったら、ミリン、醤油、三温糖(さんおんとう)で味付けし、一晩水につけておいた大豆をミキサーで挽いたものを加える。

一晩水に漬けた大豆をミキサーで挽いておく
調味料を加えて味付けし、挽いた大豆を加える

「大豆を挽くのは昔は石うすで挽いていました。そして、挽いた大豆を加えたら、焦げないように混ぜ続けます。段々と粘りが出てくるし、これが大変なんです。汗が出ますよ(笑)」。

焦げないように混ぜ続ける

最後に醤油で味の調整をしてできあがりだ。ほのかな黄色を帯びた『かすよせ』からはいい香りも漂う。

醤油を加えて味を調整してできあがり

「カボチャを入れると色合いがきれいになりますね。お米を使うところもありますが、もち米を使ったほうがより粘りが出ます。どうぞ食べてみてください!! 素材の味をいかすように、味付けは薄味ですよ」。
カボチャの風味がふわっと口の中に広がるやさしい“母の味”だ。取材班は渡邉さんに勧められるままに、何杯もおかわりしてしまった。
「私は結婚してここにきて初めて『かすよせ』を食べました。初めて食べた時、『美味しいな』と思ったことをよく覚えていますよ。それから50年食べています(笑)。家で作った時は近所におすそわけしたり、ご近所さんが作った『かすよせ』をいただいたりすることもあります。やさしい味で、お腹のたしになる料理ですね。うちの主人も好物なんですよ」。

山間の伝承料理に詳しい渡邉さん。中でも『かすよせ』が特にすぐれている点を教えてくださった。
「『かすよせ』は栄養面ですぐれていますね。野菜をたくさん使いますし、大豆の植物性タンパク質と鶏肉の動物性タンパク質が摂れて栄養豊富です。やわらかいのでお年寄りでも食べやすいし、消化もいいですからね。お腹も満たされる料理ですね」。
そんな『かすよせ』を、渡邉さんは次の世代に伝えようと尽力されている。

「中学生に教えたら、みんな『美味しい』と言ってくれました。その後、家でおばあちゃんに作ってあげたり、おばあちゃんと一緒に作った子どもさんもたくさんいたようです。そんな風にして食文化が守られていくといいですね。この地域では12月の第1日曜に村民全員が集まる宮座祭りがあり、その時は必ず『かすよせ』を作ります。前の日から準備をしておかないといけない手のかかる料理ですが、『かすよせ』は絶やしてはいけない、守っていかなければならない伝承料理です」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

材料

鶏肉、サトイモ、鶏肉、タマネギ、ニンジン、赤カボチャ、ゴボウ、シイタケ、もち米、大豆。鶏肉以外はすべて自家製だ

味付け

調味料はミリン、三温糖、醤油のみで、使う量も多くはない。素材それぞれの味を生かすため、薄めの味付けにしている

作り方

鍋に油をひいて素材を炒め、シイタケの戻し汁を入れて煮る。味付けした後、大豆を挽いたものを加え、焦げないように混ぜ続ける

このページを共有・ブックマークする