鶏肉、大根、ニンジン、コンニャク、ゴボウなどがよく使われる。サツマイモやサトイモを使うこともある
昆布出汁やカツオ出汁と麦味噌を使うことが多い。お店では鶏ガラスープを加えたり白味噌を使ったりの工夫もなされている
具材を1cm角ほどに切った後、下ゆでするなどして下ごしらえする。出汁で煮込み、味噌で味を整え、ネギなどを加える
『御膳所 桜華亭』は、鹿児島の観光地としても有名な『仙巌園(せんがんえん)』内にある食事処。1658年に島津家19代光久が、この地に別邸を築造したことでも知られている。島津家がこの地に別邸を作った理由…それは、雄大な桜島の姿を望むことができる最高の場所だからといわれている。2012年にオープンした『御膳所 桜華亭』の大きな窓からも桜島の姿を眺めることができる。
「ここは絶景レストランです。様々な表情を見せる桜島の姿も“ごちそう”ですね。この風景も、おかずにしてください」。
そうお話してくださるのは料理長・池畑忠広さん。池畑さんが作る料理も、桜島に負けない、繊細で美しいものだ。
「食材も料理も、鹿児島という郷土にこだわったものを目指しています」。
『さつま汁』は、キビナゴやさつま揚げなど様々な鹿児島の料理を気軽に食べられる『薩摩郷土料理御膳』や『磯御膳』の一品として楽しめる。
「具材は、鹿児島県内産の鶏もも肉、大根、ニンジン、タケノコ、ゴボウ、コンニャク、うす揚げ、(水で戻した)シイタケです。鶏肉は煮た時にしっかり味が出る、もも肉がいいですね。
材料はすべて1cm角くらいのサイコロ状に切って、それぞれ別々に下ゆでします。特にゴボウやタケノコはアクが強いですしね。サイコロ状に切っているのは食べやすくするためです。
ゆでた材料を出汁に合わせて少し煮ます。
出汁は鶏ガラスープを使ったりすることもありますが、うちは上品に仕上げるためにカツオ出汁です。
少し煮たら麦味噌を加えて味付けします。器についで、おろしショウガを搾ります」。
“丸に十の字”の島津家の家紋が器に入った『さつま汁』。たっぷり入った野菜の味もよくわかる、やわらかな味わいだ。
「煮物はみんなそうですが、1日置いておくほうが、味が染み込んで美味しくなります。『さつま汁』は汁物でもあり煮物でもあるのです。お昼の定食のようなセットの一品として食べていただくのか、夜の会席料理の一品として食べていただくのかで、味付けは少し変えています。
味噌を加減することなどで、定食のように、ごはんと合わせる時はやや濃いめに、会席の場合は、ややあっさり目に味わいを調節しています」。
『さつま汁』に関するエピソードも教えていただいた。
「鶏肉を使う『さつま汁』の歴史は古いと思いますよ。私の小さい頃も、家で鶏を飼っていましたし、どこの家でも飼っていました。闘鶏で負けた鶏をつぶして食べたことから『さつま汁』は始まっているようなのですが、やがて庶民が食べるものになっていったのでしょうね。中心となる具材は鶏肉、大根、ニンジンで、この3つ以外は手元にあるものを入れるという感じですからね。サツマイモ、ジャガイモ、サトイモなどを入れる方もいますよ。芋類を入れると腹持ちもよくなるかもしれません。私は材料をすべて別々に下ゆでしてから合わせていますが、それぞれの家庭で作る時はアバウトな作り方で、すべて一緒に煮込むことが多いようです。簡単に作れるから、家庭料理であり郷土料理なんですね」。
桜島を正面に見ながら食事ができるように、店内には、窓に向かうカウンター席も用意されている。
「お一人の方やカップルに人気ですね。春は園内に桜が咲いて、その向こうに桜島、秋は園内を菊の花が彩り、その向こうに桜島。夕方の桜島もきれいですが、桜島からのぼる朝日もきれいなんですよ」。
四季折々に、またそれぞれの時間帯でうつろう桜島の姿。その姿を感じながら、池畑さんは料理に精魂を込めている。
鹿児島県内産の鶏もも肉、大根、ニンジン、タケノコ、ゴボウ、コンニャク、うす揚げ、(水で戻した)シイタケ
素材を煮込む出汁は、カツオ出汁だけを使う。そうすることで仕上がりが上品な味わいとなるのだ。
それぞれの具材を別々に下ゆでした後、出汁で少し煮込み、麦味噌を加える。器に入れておろしショウガを搾り、ネギをちらす
島津家の別邸として作られ、現在は観光スポットとして有名な『仙巌園』内にある食事処。雄大な桜島の姿を見ながら、鹿児島ならではの味を楽しむことができる。『さつま汁』は鹿児島の味がセットになった『薩摩郷土料理御膳』や『磯御膳』の一品として楽しめる。錦江湾で獲れた鯛を使う『鯛しゃぶ御膳』、鹿児島県産黒豚を使う『黒豚重ねカツ御膳』も人気が高い。
住所 | 鹿児島市吉野町9700-1(仙巌園内) |
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電話 | 099-247-1551 |
営業 | 11:00〜OS15:30 ※夜は要予約 |
休み | なし |
席 | 60席 |
カード | 可 |
駐車場 | あり ※仙巌園への入場料(一般1000円)が別途必要 http://www.senganen.jp/ |