海水をひいた生簀から取り出したイカは短い時間で調理される。切り目の入れ方や、切る時の幅は、各店で様々だ
イカの甘味と旨味をより引き出すための刺身醤油は『活き造り』の重要な要素。醤油をベースに出汁を加えるなど工夫される
『活き造り』以外にも、イカを使った様々な料理が提供されている。定番の天ぷら・塩焼き・煮付けに加え、各店自慢の料理もある
『いか道楽』があるのは、呼子港の対岸に位置する加部島(かべしま)。店主・宮本幸治さんは、加部島のさらに北に位置する加唐島(かからしま)でかつて漁業を営まれていた。
「呼子はくじら漁の街で栄えていて、その後は鯛などを獲る人はいましたが、イカを獲る漁師さんは少ししかいませんでしたね。夏だけイカを獲って、ほとんど一夜干しやスルメなどの加工品にしてました。刺身を食べることはあっても、イカの形がそのまま見えるような活き造りはなかったですね。1980代から呼子で活き造りが食べられるようになりました。その頃、私は生きたイカを福岡などの料理屋さんに運ぶことを始めたんですよ。他の魚と違って、窓のない真っ暗な水槽では運べなかったり、海水の状態が悪くて全部死んでしまったりと、随分と苦労しましたね。そんな中、配達するならイカの備蓄場所があったほうがいいと思ったんです。その場所は四六時中海水をひくために海辺がいいと考えて探していたら、とっておきの場所が加部島にあったんです。そして、レストランも一緒にやろうと始めたのがここなんですよ」。
今も昔もこちらの生簀にはイカが元気に泳いでいる。
「24時間ポンプで新鮮な海水を汲み上げて生簀に入れ、その中でイカを泳がせています。呼子でイカを食べさせる店はどこも、うちと同じでイカを海水の中で泳がせています。これが呼子のイカの美味しさの秘密なんです。呼子では年間数種類のイカが獲れますが、新鮮な海水を使った生簀で泳がせているのが『呼子イカ』なんですよ。イカはデリケートで養殖できませんが、水がきれいだから生簀ではしばらく生きていることができるんです」。
生簀から揚げられたイカは素早く調理される。
「内臓を取り、洗って身を外したら、皮を剥いで、かざり包丁(切れ目)を入れます。その切れ目とは直角の方向に身を切って飾り付けます。
切れ目を入れるのは、元々はイカの内側部分。それを上側にして盛りつけているわけですが、切れ目を入れているのでくるりと丸まりません。そのため、イカの形を作ることができるんです。
醤油は九州の甘口の刺身醤油を使います。醤油は軽くつけるだけにして、イカ本来の甘味を感じてください! 身が厚い部分のほうが、歯応えもありますね。さばいてすぐは身がまだ生きていますから、よりコリコリですよ。とにかくさばいてすぐが美味しいと思います。少し寝かせると甘味は出てくるのですが、歯応えはさばいてすぐの新鮮な時しか楽しめません。新鮮な証拠に、ゲソにレモンを絞ったら動き回ります(笑)」。
宮本さんが言われるように醤油は少しだけつけていただく。コリコリという歯応えがおもしろい。噛むほどに甘味も増していくようだ。
「どこにもない独自の商品を作りたい!」という宮本さん。活きたイカをそのまま送るという画期的な商品『活きてるまんま!』も開発された。
「生きているイカを特殊なパックに入れて、これで24時間は持つんですよ。その日のうちに東京まで届けられますね。もちろん多少値段が高くはなりますが、極上のイカはフグのように高いものなんです!そのイカが呼子ではボリュームたっぷり食べられるということですね」。
その他、イカスミ入りのイカしゅうまいや、水に浸すだけで活き造りが楽しめる『瞬間凍結イカ活き造り』、イカを醤油やもろみに漬けた『いかじまん』といった珍しい商品もある。
「『いかじまん』の醤油仕込みは焼酎に、もろみ仕込みはごはんによく合います。どちらも、口の中でとろけますよ」。
宮本さんは唐津観光協会・副会長。様々な角度から、呼子のイカの未来や環境についても考えていらっしゃる。
「五島から山口県にかけての玄界灘は水温が15度〜20度くらいで、一番獲れているケンサキイカの産卵しやすい場所ですね。そこで獲れたイカが呼子に揚がり、私たちがすぐに料理します。生簀に使う海水はこの湾内のものです。加部島は、“壁島”でもあって、風と荒波を防いでくれるので、呼子湾はおだやかです。そして、潮の流れがよくて湾内はいつもきれいなんですよ。この自然を私たちは守っていかなければなりません。呼子の海があってこそ、新鮮で美味しいイカになるんです。そして、みなさんが呼子にイカを食べに来てくださるのですから。『呼子にごはん食べに行こう』ではなくて、『呼子にイカ食べに行こう』と旅の目的になっていますしね。よそでイカを食べても美味しいとは思いますが、呼子ならではの美味しさがあります。環境があってこその“呼子イカ”ですね」。
イカを泳がせている生簀には、24時間ポンプで新鮮な海水を汲み上げている。活き造りは注文後に生簀から揚げたイカをさばく
九州のやや甘い刺身醤油を使っている。「醤油は軽くつけるだけにして、イカ本来の甘味を感じてください」とのこと
『いかじまん』。左はイカを醤油に漬け込んだ醤油仕込み。右はイカをもろみに漬け込んだもろみ仕込み。焼酎やごはんによく合う
「新鮮な海水を24時間ポンプで生簀に汲み上げています」と店主・宮本幸治さん。イカの味をストレートに楽しむには『活き造り』が一番だ。その他、『いか釜飯』やイカを醤油やもろみに漬けた『いかじまん』などイカメニューも色々。さらに活きたイカをそのまま持ち帰れる『活きてるまんま!』も開発! 呼子のイカの美味しさを広く伝えようとアイデアを凝らしている。
住所 | 唐津市呼子町加部島3606 |
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電話 | 0955-82-5539 |
営業 | 10:30〜18:00OS |
休み | なし |
席 | 200人 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.ikadoraku.com/ |