肉厚で香りが高い生しいたけを使う。産地、大きさ、形、色などを参考に、作り手は炭火焼きに合うしいたけを吟味する
しいたけの味付けは基本的に塩のみだが、そのかけ方が作り手によって異なる。焼き上がったらカボスをかけていただく
かさの表側から焼くのか、裏側から焼くのか、作り手が工夫している。かさの裏側に現れる水滴が出てからどうするかがポイント
一歩中に入ると、太い柱と梁が包み込んでくれる。落ち着いた空間で食べられるのは、新鮮な魚介をはじめ、野菜、肉など地元大分産の素材を使った料理の数々だ。
グランドメニュー以外の“本日のおすすめメニュー”は、料理長・鳥井田隆(とりいだたかし)さんが目利きして仕入れた素材から組み立てられる。そこには、大分の旬を食べられるメニューがずらりと並ぶ。
グランドメニューに記された『焼き椎茸』は年中食べられる定番の料理だ。
「生産者の方の努力の賜物ですが、大分の原木生しいたけは肉厚があって最高ですね。焼いて食べるのが一番です。小さい頃、私自身はしいたけがあまり好きではなかったのですが、小学校の頃にばあちゃんが焼いてくれたしいたけを食べて、目覚めましたね(笑)」。
素材の美味しさを引き出す作り方はいたってシンプル。
「いしづきを落とし、軸とかさの部分を切り分けます」。
「かさの両面に酒を塗り、さらに岩塩をふりかけます」。
「まず裏側を下にして焼き、頃合いを見て裏返します」。
「裏返したひだの部分はこんがりと焼き色がついて、水滴が浮かんでいます。この水滴はしいたけの旨味成分なんです。これだけでも美味しいですよ(笑)」。
横では、酒と岩塩をふった軸も焼かれ、厨房にはいい香りが漂ってくる。
「焼き加減は色と、手でさわった感じで確認しています。初めは少しかたいのですが、焼けると耳たぶくらいにやわらかくなりますね」。
かさの部分を適当な大きさに切り、軸を裂いて皿に盛りつける。
必ず添えられるのがカボスだ。
「カボスを絞って食べるとしいたけの旨味がさらに引き立ちます。刺身に使ったり味噌汁に入れたり、大分ではカボスを絞ってなんでもかんでも使いますね(笑)。大分の料理には欠かせない味わいです」。
女将・玉山広美さんにお話をうかがった。
「私たちのモットーは、お客様のわがままをニーズととらえること。材料と技術があれば応えることができますから、お客さんに喜んでいただけるようにがんばってます」。2016年には、よりくつろいでいただけるようにバリアフリー化されたとのこと。
「うちに来てくださる方は滞在時間が長くて2次会に行かない方が多いようです(笑)」。
大分の味をゆっくりと味わえる店として、30年以上、多くの方に愛され続けている。
大分県産の原木しいたけを使っている。肉厚で香りも高いしいたけで、軸の部分も美味しい
かさの全体に酒を塗り、岩塩をふってから焼く。焼き上がったら、カボスを絞って食べる。軸も同じく酒と岩塩をふって焼く
まず、かさの裏側を焼き、次にひっくり返して表側を焼く。焼き加減は色と触感で判断。軸は焼いた後で裂いて盛りつける
太い柱と梁が包み込んでくれる落ち着いた空間で食べられるのは、新鮮な魚介をはじめ、野菜、肉など地元大分産の素材を使った料理の数々。料理長が目利きして仕入れる“大分の旬”を味わいたい。『焼き椎茸』は肉厚の原木しいたけに酒と岩塩をふりかけ焼き上げる。大分の味をゆっくりと味わえる店として30年以上、多くの方に愛されている。