鮎の宝庫・球磨川沿いに伝わる
酢で締めた鮎を使う素朴な姿ずし
熊本県南部の人吉(ひとよし)盆地を流れ八代海(やつしろかい)に注ぐ球磨川(くまがわ)。日本三大急流の一つに数えられ、豪快な川下りとともに、昔から鮎の産地としても知られている。水が澄んでいるため太陽の光が川底まで通り、鮎の餌となる藻が豊富にある。さらに、激流で泳ぐことで身が締まり、鮎は美味しくなるのだ。塩焼き、甘露煮、背ごしなどに加え、球磨川沿いでは『鮎ずし』もよく食べられている。
伝統的な『鮎ずし』は鮎の形をそのまま残した姿ずし。鮎の背中から包丁を入れ、背びれ、中骨、ワタを取り除いた身に塩をまぶし少し時間をおく。塩を洗い流した後、酢で締める。締める時間によって鮎の身の食感と味わいが変化するので、その塩梅が重要だ。腹の部分がつながった開きのような形の身にすし飯をはさむように詰め、形を整えて適当な大きさに切ればできあがり。その他、半身にしてすし飯の上にのせてから切るというスタイルもある。
口に運ぶと、鮎の独特の香りが広がり、身の旨味を酸味が引き立て、すし飯の味ともからむ。醤油を少しつけて食べても美味しい。頭から尻尾まですべて食べられ、身の部分がやわらかいが、通(つう)は濃厚な頭の部分を好むようだ。
●鮎の一生
鮎は秋に川の下流で産卵し、孵化した鮎は海に下る。冬を海で過ごした鮎は春になると遡上して中流域で夏を過ごす。そして秋になると川を下り、産卵して一生を終える。
●球磨川の鮎
球磨川は水がきれいで太陽の光が川底まで届くことで鮎の餌となる藻がよく茂る。餌が豊富にあるので、球磨川の鮎は大きく育つ。体長30cmを超える『尺鮎』と呼ばれる鮎も育つようだ。特にきれいな水の中にしか生育しない珪藻(けいそう)を餌にすることで、スイカのような独特の香りをまとい、急流で暮らすことで、引き締まった身にもなる。鮎は日本各地に生息するが、球磨川の鮎は多くの人を魅了している。
鮎の背びれ、中骨、ワタを取り除き塩でまぶす。塩を洗い流した後、酢で締めておく。背中側から包丁を入れ、背開きすることが多い
炊いたごはんに砂糖、塩、酢などを合わせる。鮎の身の旨味を引き立てる味付けだ。米どころである地元の米が使われることが多い
背開きした鮎の身にすし飯をはさむように詰め、適当な大きさに切る。半身をすし飯の上にのせるスタイルもある
3本の中から飲みたい一本をお選びください。
3種類の飲み方からおすすめを一つお選びください。