細く切ったサツマイモを
ふわりと揚げた家庭料理
霧島連山に望む宮崎県・都城地方。都城をはじめとした霧島連山周辺はサツマイモの産地であり、『がね』はこの地方でよく食べられているサツマイモを使った家庭料理だ。
細く切ったサツマイモやその他の野菜に、味付けした衣を合わせ、油で揚げる。一見、野菜のかき揚げに似ているが、かき揚げは材料と衣をさっくりと混ぜて軽さを出すのに対して、『がね』は材料と衣をしっかりと混ぜ、カリッとした食感とともにふわりとした食感を出すのが特徴だ。南九州の言葉で『がね』とはカニのこと。揚がった材料を足に見たて、その姿がカニに似ていることから『がね』の名前がついたと言われている。
材料はサツマイモを入れること以外に決まりはない。よく使われるのはカボチャ、ニンジン、タマネギなど。サツマイモだけで作られることもあるし、山菜やゴボウなどの季節の食材、イリコや鶏肉などが加わることもある。味付けも砂糖をたっぷりと入れて甘めにしたものや、塩味を効かせたものなど千差万別。作り手によって材料も味わいも異なる、まさに母から子へとつながる家庭料理だ。
子どもにはおやつとして、大人には焼酎のつまみとしても食べられている『がね』。霧島連山周辺では人が集まる時には欠かせない料理として、幅広い世代に愛されている。
『がね』と霧島周辺で行なわれている『がねコンテスト』について、一般社団法人 都城観光協会・五代梨紗さんにお話をうかがった。
■がねの歴史
「薩摩藩の農書『成形図説(せいけいずせつ)』によると1800年代には『かね』という言葉があったようです。この時の『かね』はサツマイモの細切りを、乾燥させたものか、水にさらして漉したものを乾燥させたもののようです。乾燥させるのは手間がかかることから揚げるようになったのかもしれませんが、はっきりとはわかっていません。『がね』は南九州になんとなくずっとあるという感じなんですよ(笑)。家庭でも作られていますし、スーパーでも売られています」。
■『がねコンテスト』開催のきっかけ
「なにか都城を盛り上げることをやろうと考えた時に、都城のソウルフードは『がね』だという話になりました。そこで『がね』にまつわるイベントの開催が決定しました」。
■コンテスト出場の条件
「サツマイモを使うこと以外は特に規定していません。甘いおやつのような『がね』もありますし、おかずになるような『がね』もあります。これまで、魚介を入れたものもありましたし、カレー味のものなどおもしろいものもありましたよ」。
■審査の方法
「料金(2013年は200円)を払っていただくと、すべてのチームの『がね』を食べることができます(2013年は7チーム)。一番美味しいと思ったチームに投票していただくという仕組みです。都城市では、『滝の駅 せきのお』で開催していますが、霧島市や小林市など環霧島地区の街でも同じように『がねコンテスト』が行なわれています。各街の上位2チームが『G1グランプリ環霧島決勝大会』出場となるのです」。
■来場者はどこから来ているのか?
「試食の後のつまようじを地図に刺していただいたんですが、地元の方が多かったですね。『材料を教えてください』という問合せも多いので、当日は各チームの前に材料を貼り出したりもしています。みなさん、ご自分のがね作りの参考にされるのでしょうね。それほど都城の方は『がね』に対して熱心だし、『がね』が好きなのでしょうね」。
■『がね』の変化
「『がね』の衣には小麦粉が使われますが、年齢層の高い方は中力粉や強力粉を使ってしっかりした歯応え・食べ応えがあるものを好まれるようです。それに対して若い世代は薄力粉を使ったふわふわしたものを好まれるようですね。ですから、全体としては、その中間くらいの食感の『がね』に人気があるようです。『がね』は昔からずっとありますが、時代とともに少しずつ変化しているようですね」。
■一般社団法人 都城観光協会
住所/都城市栄町4553(JR都城駅構内)
電話/0986-23-2460
http://miyakonojo.tv/
基本となるのは細く切ったサツマイモ。カボチャ、ニンジン、タマネギが使われることも多い。季節の野菜や山菜が入ることもある
衣は小麦粉と水がベース。ただし天ぷらとは違い醤油、砂糖などで衣に味付けをする。甘いものも、やや塩辛いものもある
具材と衣をしっかりと混ぜ合わせた後、油で揚げる。表面はカリッと、中はふんわりとした食感に揚げることがポイントだ
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