蒲焼きにしてからさらに蒸す…
香ばしくてとろけるうなぎの味わい
北原白秋の生家があることや、堀割(ほりわり)を巡る川下りで知られる水郷・柳川。かつてうなぎの名産地だった柳川で、江戸時代から親しまれているうなぎの食べ方が、『鰻のせいろ蒸し』だ。始まりは、“柳川藩主が冷めたうな重をせいろで温めなおした”とも、“江戸に修行に行った人がひらめいた”とも言われているが定かではない。
まずは蒲焼き作りから。捌かれたうなぎをじっくりと素焼きした後、タレをつけて焼くという作業を何度か繰り返す。継ぎ足しながら使われ続けているタレは、各店が大切にしている味の決め手。食欲をそそる色と香りになるまで焼き上げる。
固めに炊いたごはんにタレをまぶして四角いせいろに入れて蒸し、うなぎの蒲焼きをのせてさらに蒸す。香ばしいうなぎの身は舌の上でとろりととろけるほどにやわらかくなり、ごはんの一粒一粒にしっかりとタレの味とうなぎの旨味が染み込んでいく。その上に散らされた錦糸卵は色も味わいもアクセントとなる。
関東流の背を割く捌き方と、関西流の直火焼きを融合させ、さらに蒸すという手間を加えた『鰻のせいろ蒸し』。柳川だけに伝わるうなぎ料理だ。
■うなぎの生態
日本人には昔から親しまれているうなぎだが、その生態は未だ明らかになっていない部分が多い。最近の報告では、マリアナ海溝で産まれ、日本列島付近まで訪れ、1〜5年の歳月を過ごした後、再び産まれた場所へ帰っていくということだ。
柳川からも近い、筑後川河口付近の汽水域で獲れるうなぎは絶品と言われ、数は減ったが今でも7月中旬頃から釣りや『うけ』と呼ばれる漁が行なわれている。かつては、竹竿の先に鉄の鉤を付けた道具で海底の砂の中にいるうなぎをひっかける、筑後川独特の漁法『ひっかけ』も行なわれていた。背中が鶯(うぐいす)色のうなぎは『アオ』と呼ばれ、特に美味しいのだそうだ。
天然うなぎは激減しており、現在うなぎ料理に使われているのは、宮崎や鹿児島で養殖されているものがほとんど。ちなみに、養殖ものは半年ほどで食べられるようになるが、天然ものは3年以上はかかるとのことだ。
白焼き(素焼き)した後、タレにつけて焼くことを数回繰り返し蒲焼きにする。タレは継ぎ足しながら使い続ける各店秘伝の味
固めに炊いたごはんに、蒲焼きにも使うタレをまぶして、時間をおいたり蒸したりして、味を染み込ませている
タレの味がついたごはんに、蒲焼きの切り身と錦糸卵をのせて蒸す。蒲焼きはふっくらとなり、ごはんには蒲焼きの旨味が加わる
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