新鮮なイカを素早い技でさばく…
コリッと甘い透明な呼子名物
さっきまで生簀で泳いでいたイカが、注文後まな板の上にのせられてさばかれ、あっと言う間に活き造りに。その間数分。とびきり新鮮なイカを素早い技でさばく、だからこそ皿に盛られた身は透明で美しい。軽く醤油をつけ、一切れ口の中へ。コリッとした歯応えと広がる甘味。この食感と味も、さばきたての“今”だけしか味わえない。時間が経てばすぐに身が白くなってしまい、食感も変わってしまうのだ。
かつてはくじら漁など、古くから栄える天然の良港・呼子には、玄海灘の様々な海の幸が水揚げされる。その中でも特に有名なのがイカ。幾種類ものイカが一年中水揚げされ、その味を楽しめる。春から秋にかけての時期に食べられる『ケンサキイカ』は、イカ類の中でも特に甘味が強いと言われており、県内外から多くの客が足を運ぶ。
活き造りの身を食べ終わったら、下足などの残った部分を塩焼き、煮付け、天ぷらにしてもらって食す。するとまた違ったイカの甘味や旨味を楽しめる。
呼子のイカが美味しい理由をもう一つ。呼子の各店は、漁師から直接イカを買い取り、生簀に入れる。そして、その生簀は、目の前の海から常に新鮮な海水を取り入れているのだ。呼子に行かなければ、そのイカは味わえない。
呼子町漁業協同組合の小玉浩幸さんにお話をうかがった。
「うちには組合員さんが200人いて、8割はイカ釣りをやっています。イカは通年獲っていますが、時期によって種類が変わります。4月〜10月はヤリイカやケンサキイカで、9月〜10月はより肉厚になってきます。11月〜2月はアオリイカ(ミズイカ)ですね。漁は一隻に一人が乗って行ないます。船は5トン未満というのが基本的。
疑似餌や重りがついた左右4本ずつ合計8本の手ぐす(糸)を船から垂らして釣りあげます。イカ獲りではなくてイカ釣りですね。疑似餌の色やそれにつける重りはそれぞれに工夫されているようですね。
一隻には5〜6灯の電球がついていて、電球の光にイカが集まってくるんです。とても明るくて、この電球の光で日焼けみたいになります。熱くなるのでさわったら火傷しますよ。1灯3万円もして、毎年交換しなければなりません。船のエンジンを回して発電するので、燃料代もかかり、なかなか大変です。イカは水深100mくらいのところを泳いでいるんですが、海の表面近くと下の方では潮の向きが異なっていたりします。ですから、魚群探知機などでイカが群れている場所はわかっていても、そこに針を持っていくには、経験や勘が必要なんですよ。イカが傷まないように、釣り上げた時に手でさわらないことも大切ですね」。
港も案内していただいた。船が着く場所には、イカを一時的に入れておく生簀が置かれているのだが、生簀の内側には何かが塗られているようだ。
「生簀の内側には柿渋を塗っています。生簀の中にイカを入れておくと、イカが壁に頭をぶつけて傷んでしまうことがあります。けれど、壁が黒いとぶつけないので、内側を黒くしておくといいんです。塗料ではなく自然素材の柿渋を使っています」。
呼子のイカの美味しさの秘密は、こんなところにも隠されているようだ。
『イカの活き造り』と合わせて呼子で有名なのが、日本三大朝市としても知られる『呼子朝市』。元旦以外は毎朝(7:30〜12:00くらい)行なわれている。
朝市通りと呼ばれる200mほどの通りは歩行者天国となり、新鮮な魚介類や季節の野菜などが売られている。
海水をひいた生簀から取り出したイカは短い時間で調理される。切り目の入れ方や、切る時の幅は、各店で様々だ
イカの甘味と旨味をより引き出すための刺身醤油は『活き造り』の重要な要素。醤油をベースに出汁を加えるなど工夫される
『活き造り』以外にも、イカを使った様々な料理が提供されている。定番の天ぷら・塩焼き・煮付けに加え、各店自慢の料理もある
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