肉厚の生しいたけを炭火で焼く
塩とカボスで引き立つ旨味
大分県は日本でも有数のしいたけの生産地。クヌギなどの原木にしいたけ菌を接種してしいたけを作る原木栽培の割合が他の地方に比べて高い。原木栽培のしいたけは、肉厚で香りも高く、焼いて食べると美味。『しいたけの炭火焼』が大分でよく食べられている理由だ。居酒屋の一品メニューにもあるし、郷土料理コースの一品として出す店もあるほど親しまれている。
料理はしいたけに塩をして炭火で焼くだけといたってシンプル。それだけに、素材であるしいたけの味わいがストレートに伝わる料理だ。産地、大きさ、形、色など、作り手は炭火焼に適したしいたけを日々吟味する。
焼く時のポイントは、焼きすぎないことと、ひだがあるかさの裏側に現われる水滴。水滴が現れた後の焼き方は作り手によって異なるが、『水滴が下に落ちないようにすること』は変わらない。しいたけの旨味成分も入っているからだ。
香りが立ちのぼる焼き上がったしいたけに、大分特産のカボスを絞るとさらに味わいが増す。香りと弾力感のある歯応えは、新鮮な大分産生しいたけならではのもの。初めて食べる人にとっては、それまでのしいたけの概念が変わってしまうほどのものだ。
JA玖珠九重生椎茸部会部会長・若杉義昭さんに、原木生しいたけの栽培について話をうかがった。
しいたけ作りを語ってくれる若杉さん
「クヌギの木などを切り、2カ月ほど水分を抜いた後、1mくらいの長さに切ります。その木に穴を空け、しいたけ菌を接種(駒うち)します。その作業を毎年3月くらいに行ない、それから1年2カ月ほどねかせておきます。しいたけ菌が木の中全体にいきわたり、熟成するのを待つわけですね。この木のことをほだ木と呼びます。
熟成が終わったら、水につけることと、たたくことで木に刺激を与えます。するとしいたけが発生して3日ほどで収穫できるのです。ほだ木はしばらく休ませて、また刺激を与えることで再びしいたけが発生します。
1本のほだ木は8~9回使えますね。しいたけがとれなくなったほだ木は、燃料にしたり肥料にしたりして無駄なく使っています」。
かさが開ききる前に収穫しなければならないとのこと
「しいたけ栽培には、空気の流れ、温度、湿度などが重要です。しいたけはマイナス5度くらいでも大丈夫なのですが、40度を越えると死んでしまいますから、気をつかうところです。
そして、木をねかせている時やほだ木を休ませている時に、水をまいたりするのですが、水を欲しているのかは見ただけではわかりにくいのです。うまくできているかどうかは、ほだ木に刺激を加えてしいたけが発生するまでわからないのです。発生しなければ失敗していたということですね。
野菜などは、葉の状態を見ればどのような状態かわかりますからね。原木栽培は見ただけでは判断できないことが多いのです。経験しかないですね」。
ほだ木が積まれている上には『フララ』と呼ばれる黒いビニールひものようなものがつけられている。これは、日光が当たりすぎて温度が上がりすぎないようにするもの。風で揺れるので、自然の木漏れ日に近くなるという効果もある
「このあたりは標高600mほどありますが、朝と昼の温度差があるのも大切なところです。身がしまって歯応えがいいしいたけができるのです。天然のしいたけができる春と秋が一番美味しい時期だと思いますよ。春のしいたけは『春子』、秋のしいたけは『秋子』という呼び方もありますね」。
大分県のしいたけ栽培について、大分県農林水産部林産振興室で話をうかがった。
日本におけるしいたけ栽培は、1670年頃に、豊後の国(現在の大分県津久見市)出身の源兵衛さんという人が、今の宇目町で始めたと言われている。
源兵衛さんは炭焼き職人で、ある日、炭焼きの残り木にしいたけが生えているのを見つけた。それは飛んできたしいたけの胞子が木に付着して育ったものだったのだ。そこで源兵衛さんは、クヌギやナラに鉈(なた)で切れ目を入れ、そこに胞子が付くのを待つという『鉈目式しいたけ栽培法』を発案したのだという。
広葉樹にしいたけ菌を接種して栽培する『原木栽培』と、水とおがくずなどを固めた培地にしいたけ菌を接種して培養する『菌床栽培』がある。生しいたけ生産のうち『菌床栽培』の割合が90%を越える県もある中、大分県では『原木栽培』35%、『菌床栽培』65%と、『原木栽培』の割合がかなり高い。
炭火焼きに向いているのは香りが高い『原木栽培』の生しいたけだ。大分県では数十種類の品種が作られている。
刺身や焼き魚にかけたり、ポン酢の素にしたりと、大分県全体で様々な料理に使われている柑橘。熟す前の緑色のものを収穫してしぼり汁を使う。爽やかな酸味と香りが特徴だ。
肉厚で香りが高い生しいたけを使う。産地、大きさ、形、色などを参考に、作り手は炭火焼きに合うしいたけを吟味する
しいたけの味付けは基本的に塩のみだが、そのかけ方が作り手によって異なる。焼き上がったらカボスをかけていただく
かさの表側から焼くのか、裏側から焼くのか、作り手が工夫している。かさの裏側に現れる水滴が出てからどうするかがポイント
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