2023.03.24

親にも、子にも、地域にも。新たな居場所がそこにある。

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社員のニーズから生まれた子ども園は、
地域とのつながりも育んでいる。

2019年10月、『きりしま たけのこ こども園』が開園の日を迎えた。
「まさか焼酎メーカーに入社して保育園の設立に携わるとは思っていませんでした。でも最初の入園式で、子どもたちやその親御さんの顔を見ていたら、今までの苦労や大変だったことも忘れてしまいましたね」と担当した人事労務課の鈴木利享は振り返る。

きりしま たけのこ こども園は内閣府が進める支援制度の企業主導型保育事業を活用してできた保育所だ。都城市の社会福祉法人 郡元福祉会と霧島酒造が提携し、設立が実現した。
※企業主導型保育事業とは、平成28年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度。企業が従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するために設置する保育施設や、地域の企業が共同で設置・利用する保育施設に対し、施設の整備費及び運営費の助成を行う。

園の設立は、2016年10月、社会福祉法人 郡元福祉会の浅井俊博さん(きりしま たけのこ こども園現理事長)と霧島酒造代表取締役専務の江夏拓三との会食から始まった。
「拓三専務と企業主導型保育事業の話をしていたら、賛成してくださったんです。後日、鈴木さんが担当についたという連絡をもらいました」 と浅井さん。当時、浅井さんが園長を務めていた『いなり認定こども園』は定員に対して入園希望者が多く、この状況をなんとかしたいという思いがあったそうだ。

一方霧島酒造でも、子育て世代や子育て次世代の社員が多く(2016年当時の社員平均年齢は32歳)、産休育休からの復帰時期によっては、保育園などの預け先が決まらずスムーズに職場復帰ができないという問題も一部発生していた。
「専務に担当として指名されたのは、私の子どもが、浅井さんが園長先生をしている『いなり認定こども園』に通っているからという理由だったみたいです」と鈴木。浅井さんと、子育て中の鈴木とで、園の設立は動き出した。

「本当に社員のニーズがあるかどうかが一番大切だと思いました」と鈴木。霧島酒造の全社員、加えてグループ会社も含めた調査をするとともに、内閣府含め多方面に話を伺い、できる手は全部尽くして制度への申請にこぎつけた。

園内には、霧島酒造らしさの中にも子どもらしさや楽しさが垣間見えるあしらいを多く取り入れた。子どもたちの安全を第一にしつつも、自然や空間を通して子どもたちの感性が育まれ、毎日が楽しくなる内装や園庭に仕上げている。3つの特徴的な石屋根は、たけのこを表現すると同時に、ある角度から見ると霧島連山の形になるそうだ。

また、子どもたちに貴重な経験を与え、見守ってほしいという想いで、屋久島などに自生する希少価値の高い「ヤクシマサルスベリ」をシンボルツリーとして、園庭の築山に植えた。
『きりしま たけのこ こども園』というネーミングは、社内で案を出し合って決めた。真っすぐしなやかに悠々と育つ竹のように、素直にすくすくと成⾧してほしいという願いが込められている。

企業主導型保育事業ならではの試みもある。社内からあがった声を活かし、就業時間前に余裕をもって預けられるよう、開園時間は早めの7時にしている。日曜や祝日も、利用者がいれば開園。病後児保育、体調不良児保育、一時預かり保育も行っている。
「常時看護師さんも2人いらっしゃるので、子どもが保育中に熱を出しても、すぐに対応していただけます。働く親としてはすぐに迎えに行きたいですが、そうもいかない場合もあるので、そんな時に頼れる場所があることは心強いはずです」と鈴木は言う。

開園から3年経ち、きりしま たけのこ こども園は、地域の方にとっても霧島酒造にとっても、より身近な存在になってきた。園内に地域交流スペースを設置していることもあり、地域の方々の交流の場としてもご利用いただいている。いろいろな小動物を連れてきて、子どもたちに動物とのふれあいの機会をつくってくださる方や、ピアノや兜など園児が喜ぶものを寄贈してくださった地域の方もいた。
また、園のイベントが行われる際、霧島酒造は子ども用のハッピや提灯の貸し出しも行っている。ハロウィンの際には仮装した子どもたちが「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」に遊びに来るそうだ。「霧の蔵ベーカリー」はオリジナルのたけのこパンをつくっておやつとして提供もしている。

「地域で育てていただいていると実感しています。地域のイベントに私たちが参加させていただいて、反対に今度は園の行事に地域の方がいらっしゃって。そういう一緒に子どたちを見守っていくという形はベストですよね」と浅井さんは語る。
「社員にとって、保育に関する疑問や悩みがあったときの一番に頼れる相談場所のような役割まで担ってくださるのが本当にありがたいです。これからも、より仕事と子育てが両立しやすくなるような環境づくりをしていきたいです」と鈴木。
子どもも、親も、働く先生も、みんなにとっていい環境でありたいと浅井さんは言う。目まぐるしい毎日の中で、温かく寄り添ってくれる居場所がそこにはあった。

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