そのまつりの賑わいは、霧島酒造の理想そのものだ。
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食が集い、人が集う。
地域へ感謝を伝える「霧島まつり」の歴史とこれから。
焼酎を飲んでほろよいな男性、毎年出店される食を楽しみに来場した女性、ステージショーにはしゃぐ子どもたち。老若男女問わず笑顔があふれる「霧島秋まつり」が2023年11月、4年ぶりに開催された。
霧島酒造では、毎年春と秋の年2回、「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」で食と焼酎が楽しめる霧島まつりを開催しており、2日間で宮崎県内外から3万人近くのお客様が訪れる一大イベントとなっている。霧島まつりは、コロナ禍の影響で3年間開催の見送りを余儀なくされていたが、昨年の秋、ついに再開することができた。
「朝10時からスタートなんですが、オープン前にはもう第一駐車場が満車になったりと、大変ありがたい反響がありました」
嬉しそうに振り返るのは、企画室の福田達之だ。霧島まつりは、霧島酒造の社員が部署横断で実行委員会を立ち上げ取り組んでいるイベントだが、それを主導しているのが企画室。福田は2000年の立ち上げ当初から携わってきたメンバーだ。
始まりは、宮崎県が主催するイベントのサブ会場としてだった。当初は焼酎やビールのふるまいを行う程度で、規模は今の半分もなかったという。
「2002年から霧島酒造主催で独立してまつりを行うようになりましたが、当時は企画室のメンバーも6名程度。お客様も少なく閑散としていたなか、どうしたらお客様に来ていただけるか、頭を悩ませました」
まつりを盛り上げるには、人々を惹きつける大きな目玉が必要だ。そうして生まれたのが「うまいもの市」など、食を中心としたイベントコンセプトだ。
「霧島酒造には『焼酎文化は食文化の基にありき』という基本姿勢があり、おいしい食事と一緒に焼酎を楽しんでいただけるように、食文化を大切にしていきたいと考えています。『うまいものはうまい。』『九州の味とともに』などの企画はその一環で、以前から食を通じたコミュニケーションを行ってきました。霧島まつりでもその想いをお客様にお届けできるようなものにしようと考えたのです」
まず、地元宮崎のおいしい食や地域の生産者を取材し新聞広告などで紹介する『うまいものはうまい。』でお世話になった飲食店を中心に、出店の協力を呼びかけた。結果、30店舗近くが集まった。当時、宮崎県内でここまでの数の飲食店が一堂に会するイベントは珍しく、地域のお客様の反応も良かったという。
「まだ霧島まつりが初期の頃、まつりに出店いただく店舗にうかがって、カメラを手に自らソフトクリームの写真を撮影したことをよく覚えています。当時はチラシや案内看板なんかも手作りで、今思うと不格好だったと思いますが、とにかく出店してくださった店舗とお客様に楽しんでいただけるように、必死に試行錯誤をしていました」
そう語る福田の口調には懐かしさと誇らしさが滲んでいた。その後、九州各地の文化を紹介する『九州の味とともに』や『匠の蔵』といった企画の広がりとともに、九州各県の特産物の出店も増え、普段なかなか食べることができない、目にすることのない商品を求めて多くのお客様が来場するようになった。
また、霧島まつりは社員総出でもてなし、お客様に日頃の感謝を伝える場所でもある。焼酎の販売、場内の案内やゴミ拾いなど、社員一人一人がお客様と接する。お客様に喜んでもらいたいという思いのもと、毎年試行錯誤を重ねた結果、2日間で約3万人が来場する規模のものになった。
だからこそ、コロナ禍を乗り越えた4年ぶりの霧島秋まつりは、霧島酒造の社員にとっても待望のものだった。
霧島秋まつりの全体指揮を担うリーダーを務めた企画室の児島瑞基は、当時入社4年目。まだ一度も社員としてまつりを経験したことがない状態での大役だった。
「2020年以降入社した社員は、コロナ禍で学生時代に文化祭などのイベントをあまり経験できなかった世代です。自分も含めた若手社員にも、みんなで何かを成し遂げる成功体験を味わってほしいと思いました。それに、コロナ禍前のまつりを知らないからこそ出せる新鮮な発想やアイデアがあると思い、プレッシャーも大きかったですが、リーダーに立候補しました」
児島は、コロナ禍を経てお客様の期待やニーズが以前とは変化していると考え、九州各地の様々なイベントへ行き、調査した。そこで導いた答えが“体験”の提供だった。
「九州の食文化を伝えることは今までと変わらないコンセプトですが、コロナ禍で通販やお取り寄せなど非対面でのやり取りが充実した今、改めて対面でしか感じられない、 “ここでしか体験できないこと”を大事にしました」
そこで、社内にアンケートを行い、縁のあった企業とコラボレーションし、それぞれの強みを活かしたワークショップなど体験ブースを設けた。結果として、この試みは大成功に終わり、コラボ先の企業からも、地域の人々と直接触れ合える貴重な機会が得られたと喜んでいただけたそうだ。
地域の人々に、食文化の素晴らしさと、ありったけの感謝を。
日頃商品を通じてお客様に届けたいと思っている想いを、顔を見て、直接伝えられる特別な場である霧島まつり。霧島酒造がそこにかける想いは、強く深い。
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