2023.07.18

顔が見えない通販だから、お客様をもっと理解したいと思った。

  • #歴史

時代とお客様に寄り添いながら、
通販事業部は挑戦を続けている。

『金霧島』や『黒霧島MELT』など、霧島酒造の直営店でしか手に入らない“霧島”のラインアップがある。これらの販売経路として、大きな役割を担っているのが通信販売事業部(以下、通販事業部)だ。
日々の業務や挑戦について、通販事業部の渡邊初峰に話を聞いた。

通販事業部の立ち上げは2006年。当時、黒霧島がヒットし出荷調整を余儀なくされる中で、黒霧島と同じ原酒を使う、『金霧島』や『黒霧島MELT』の販売が決まっていた。
ただ、これらの商品は、一度に大量生産できないため、通常の本格焼酎を販売する流通ルートに乗せることが難しいものだった。
そこで、一つのアイデアとして浮かんだのが通販事業。現在では一般的となった通販も、当時はまだインターネットで買い物をするということが浸透しておらず、業界の中でも先駆けた動きだった。

前例が少なく、暗闇を手探りするような走り出しだった。度重なる難所を乗り越え、なんとか通販事業の立ち上げに漕ぎ着けたそうだ。
「当時立ち上げに関わったメンバーには、“販売経路が原因で、せっかくのチャレンジングな商品が売れないということにしてはいけない。できることはなんでもしていくべき”。そういうスタンスだったと聞いています」と渡邊は語る。

渡邊が通販事業部に異動になったのは2011年。通販事業の仕組みなどがある程度整い始めた頃だった。それでも当時はまだインターネットの注文と、電話注文が半々。渡邊は特にインターネット事業に力を入れることになった。

通販事業を拡大していく中で、自社のウェブサイトでお客様へ直接販売するだけでなく、大手の通販サイトの中に霧島酒造のショップを設けるような形のモール出店も試みた。だが、現在では出店を取りやめている。自社のウェブサイトの充実に力を入れるためだ。
「自社サイトの方が、お客様一人ひとりが見えることを実感したんです。ダイレクトメールが必要な方にはお送りすることができるし、季節に寄り添ったアプローチもできて、より霧島酒造らしいのかなと思っています。これも、モール出店に挑戦したからこそ気付けたことです。とても意味のある経験をさせてもらったと思います」と渡邊。
2021年には、自社のウェブサイトのリニューアルにも取り組んだ。購入目的に合わせ、商品理解を深めたいというお客様のニーズに応えるため、「焼酎“初⼼者”ガイド」や商品開発者へのインタビュー記事を特集している。ウェブサイト以外にも、InstagramなどのSNSの運用も並行して行い、よりお客様一人ひとりに届く情報発信を目指しているという。

そういった姿を目指す今でも、お客様との直接的なやりとりに難しさを感じることはよくあるそうで、『〈玉〉金霧島』リニューアルの際の一例を話してくれた。
「リニューアルの際にアガベシロップが入ったことで、ほんのりとした甘みを感じるようになったのですが、“甘くなった”の伝え方によっては、シロップのように割って飲むような甘いお酒を想像されるお客様もいらっしゃいました。社内のブレンダーから事前にもらっている味わい表現をお客様応対に活かしているものの、味わいの感じ方は人それぞれです。いろんなお客様がいらっしゃるので、そのお客様に合った、よりご理解いただけるような表現を事業部全体で検討するきっかけになりました」
コミュニケーションの難しさを感じる中でも、問い合わせをくださる方ほど、熱心に霧島酒造を好きでいてくれることが多く、嬉しい気持ちにもなると渡邊は言う。

霧島酒造ファンの方には、オリジナルグッズも好評となっているそうだ。
期間限定グッズもあり、例えばバレンタインの時期には赤霧島や黒霧島の巾着袋などを制作し、セット販売した。
こういったグッズはお客様の声から生まれ、好評を得られれば常時販売へ昇格させるなど、ファンの期待に応えられるよう日々検討している。

お客様のことをもっと理解したい。そんな渡邊の野心はまだまだ尽きない。昨年より社内でDX化が推進されていることもあり、ウェブアンケートを本格的に取り入れ、デジタル技術を駆使してお客様像をより明確にするシステムの構築にも力を入れている。
その一方で、父の日等のギフトシーズンで発送が多い時期は、霧島酒造の社員自ら運送会社に出向いて梱包作業を手伝うなど、地道な手作業も怠らない。
「社内ではまだ規模も小さい部署ですが、そのぶん、いろんなチャレンジをさせてもらえる環境です。どうすればもっと霧島酒造を好きになっていただけるか。駄目だと言われる日まではブレずに“通販事業だからこそできる新しいこと”にチャレンジをしていきたいです」と嬉しそうに語る。
一見、人と人との繋がりが想像しづらい通販という分野。だからこそ、お客様のことを分かりたいという、温かく人間らしいひたむきな姿勢が、これからも求められ続けるのだろう。

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