黒霧島のポテンシャルを再発見したのは、AIの舌だった。
- #グルメ
味覚センサーが数字で示した、食と焼酎の幸せの証。
“肴”という言葉がある。お酒とともに楽しむ食べ物のことで、人それぞれ、こだわりやお気に入りがある。
しかし、相性がいい食べ物を選びたいというのは、誰しもに共通する望みではないだろうか。
その“相性”を数値で証明する「味覚センサー」という装置が、食品業界やメディアで注目を浴びている。そのセンサーのひとつ「レオ」の開発者である株式会社AISSY代表取締役社長の鈴木隆一博士にお話を伺った。
味覚センサー「レオ」は鈴木博士が大学院で研究した内容をベースに開発された。過去に、経営に携わっていたラーメン屋での経験から、味の見える化に可能性を感じたことがきっかけだそうだ。
「味覚の議論は、とても難しかったですね。塩分をもう少しとか、甘味が強いとか、曖昧な話になりがちです。個人ならともかく、チームで商品開発する場合、味覚を数値化することはニーズがあるんじゃないかと考えました」
味覚センサー「レオ」は、人間が味を感じる舌の部位、「味蕾(みらい)」の代わりとなるセンサー部分で食品や飲料を測定し、その味を電気信号に変換。AIによる解析で、甘味・旨味・塩味・酸味・苦味の5つの項目で数値化する。人間の官能評価平均との誤差は7%ほどで、ほぼ人間の味覚を再現できているそうだ。
その成果もあり、お菓子・食品・飲料を中心に、日本全国のメーカーやレストランから問い合わせが絶えない。テレビ番組などでも取り上げられ、ますます注目度が高まっている。
霧島酒造が鈴木博士に依頼したのは、5年前の2016年。
そもそも焼酎は食事といっしょに楽しむ「食中酒」としての特徴をもっている。霧島酒造は「焼酎文化は食文化の基にありき」という考えのもと、食と焼酎の相性を長い時間をかけて発信してきており、どの食との相性も良いはずだという予想はしていた。今回、霧島の焼酎と食の相性を科学的に調べることで、焼酎の新たな可能性を測りたいという思いがあり、黒霧島・白霧島・赤霧島と合わせて、様々な食べ物をテストした。近年、SNSでも見かけることが増えた赤霧島とチョコの組み合わせに注目したのもこの時だ。
特に黒霧島は、多くのファンを魅了してきた焼酎だからこそ、その数値への期待は大きかった。
大方の想像通り、地鶏の炭火焼で95.5点、豚の角煮で96.5点と高得点を叩き出したが、ひときわ目を引いた組み合わせがあった。餃子の98.8点だ。
「これは素晴らしい結果でしたね。私の感覚的にはあまり出たことのない数値です。すべての焼酎を調べたことはないですが、一般的には90点前半じゃないでしょうか」
ビール、日本酒、レモンサワーなどで餃子との相性を調べたことがあるが、どれもここまでの数値が出たことはないと鈴木博士も舌を巻く。
「よく相性がいいと言われる赤ワインと肉料理で95点ほど、白ワインと魚料理でも97点くらいです」街中で普通に食べられるものは90点前半が多い。一流レストランなどでも90点後半くらいだそうだ。「黒霧島と餃子なら手軽に一流レストランと同レベルの美味しさを楽しめるってことですね」
100点を目指すことは可能かと聞くと、博士は少し考え込んで答えてくれた。
「絶対に出ないということはないですが、それはもう“芸術”と言ってもいいレベルでしょう」
実際、博士の力を借りて、この得点をあげることで、売上を伸ばした商品は少なくはない。しかし、それはあくまでも90点前半のものが多い。98点以上を目指すとなると、100m走で言えば、11秒台から10秒台にいくために、ゼロコンマ数秒を伸ばすようなもの。20秒を19秒にするのとは訳が違うと博士は言う。
黒霧島と餃子の相性は、すでにその境地に達しているようだ。しかし、限界はまだ先にあると言う。
「少なくとも99点、つまりあと0.2点はいけるのではないかと思います。このくらいの違いは、一般の人にはわからないかもしれない。でも、一流と言われる料理人にはわかるレベルです」
黒霧島は、ある国際映画祭の祝賀会でも採用された。世界的なシェフの推薦によるものだったが、最高品質のグルメとのマリアージュを期待されたと考えると、それも黒霧島のポテンシャルの証なのかもしれない。
最後に「味覚センサー」がもたらす今後の焼酎の飲み方について尋ねてみた。
「焼酎はロックだと濃くなり、炭酸割りだと酸味が強く、水割りだとまろやかになりますよね。その飲み方でも味は変わりますし、それだけいろんな食べ物と試すこともできるでしょう。意外性のある食べ物との組み合わせや、新しい飲み方ももっとあるはずなので、世の中への提案のために使っていきたいですね」
日々、数々の食べ物を解析したり、相性を計測したりしている博士も、黒霧島のまだ見ぬ側面があると考えているようだ。
最新技術の力も借りながら、霧島酒造の焼酎はこれまで見えていなかった魅力を常に模索し続けている。
※20歳未満の方へのお酒に関する情報の共有はお控えください。