2023.08.25

いつもの美味しさを守る、番人がいる。

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霧島酒造にとっての「品質」を突き詰めて生まれた「SQチェック」とは

“品質をときめきに”
現在の三代目社長である江夏順行が就任時に掲げた企業スローガンだ。
自らもブレンダーとして焼酎の味わいを確かめていた先代社長の江夏順吉のモットー「品質こそがお客様に対する最大のサービスである」を受け継ぎ、高品質の商品とサービスの提供で、お客様に感動を届けることを霧島酒造の使命として定めたのだ。
一口に“品質”と言っても焼酎の味わいからパッケージ、製造工程、サービスやイベント、情報発信の質まで幅広い。霧島酒造ではそれらも含む企業活動そのものを“品質”と捉えている。

確かな品質の維持のために極めて重要な任務を担っているのが、品質保証部だ。今回は、中でも味わいの品質を管理する取り組みについて、酒質開発本部長の奥野博紀と品質保証部の轟木秀恒が語ってくれた。

品質保証部が設立された2012年当時、世の中では産地偽装などの問題が相次いでいたこともあり、社会的に食の安全への意識が高まっていた。「霧島酒造としても、より第三者的な視点で製品の品質を保証していく体制が必要だと考え、新たな部署を立ち上げた経緯があります」と奥野。

さらに、出荷前の品質検査として、霧島酒造ならではの『SQチェック』という検査を行っている。
「元々は、焼酎を容器に詰める前の検査で“詰口前検査”とか“官能検査”と呼んでいたのですが、社内的にも親しみを感じたり覚えたりしやすいように、検査自体に名前をつけたんですよ」と轟木。
Sensory(感覚・知覚)とQuality(品質)の頭文字を取り、官能品質検査という意味のSQチェックという名前になった。
SQチェックが始まるまでは、商品の味わいを設計しているブレンダーが確認作業を行っていた。
「ブレンダーがチェックするとなると、自分達でつくった味を、自分でチェックすることになりますよね。そうなるとやはり客観性が薄く、気づきにくくなる可能性は高くなります。そうなることを避けるためにも第三者が必要でした。味わいや、お客様の安心安全を守る番人的な存在ですね」と奥野は語る。

SQチェックの内容としては、焼酎の中に異物が⼊っていないか数値的な確認を⾏う分析(pH、導電率)と人間の五感を使って味・⾹りを評価する官能検査の2種類の検査がある。この2種類の検査を、蔵出酒(くらだししゅ:原酒を割⽔した後の焼酎)と詰⼝酒(つめぐちしゅ:容器詰めされる直前の焼酎)の両方で⾏っていく。出荷前の大切な検査であり、この検査を合格しないと、ボトリングと呼ばれる焼酎を容器に充填する作業も始まらない仕組みだ。
SQチェックは誰にでもできるものではなく、ブレンダーと同等の官能検査能力が求められる。社内の認定制度があり、トレーニングを積んで、試験を通過した社員のみがその役割を認められている。官能評価に影響を与えるため、体調管理も大切な仕事の一つだ。日々の業務の中でもコーヒーや香辛料など刺激物は取らないといった工夫も欠かせないそうだ。

「あくまで個人的な話ですが、官能検査をしていく中で、私は特に午前中の方が感度がいいと気づきました。それからは徹底して業務中のランチは毎日同じで、味付けしていない⿃むね⾁、ゆで卵と適量の炭水化物(ご飯)です。体を一定に保っておきたいんです。」とアスリートさながらのストイックさで轟木は語る。

SQチェックがあったことで、味わいの基準からの逸脱を防ぐことができた事例もある。
焼酎は、原料が農作物であるからこそ、味や⾹りに若⼲の揺らぎが出ることがある。赤霧島のSQチェックで、通常の製品よりも焦げ臭を少し強く感じた際にも、すぐさま生産関連部門と連携。製造工程を一時的に工夫したことで、お客様が求めるいつもの味わいに整えることができた。日頃から、品質に関する緊急事態を想定して行っている関連部署との訓練やリレーションの構築が功を奏したのだ。

「SQチェックは、品質保証の最後の砦だと考えています。私たちの⼯程の先には、すぐそこにお客様が待っている。だからこそお客様を第一に考えて、高品質の商品を提供したいと日々思っています」と轟木。
「先代社長は、自分が納得する味へ仕上げるために1000分の1単位でブレンドにこだわっていました。焼酎が嗜好品である以上、お客様のおいしさの捉え方も様々です。その個人差を超えるほどにおいしさを追求するには、自分が納得するようなテストを地道に続ける努力を重ねる他ないと思います」と奥野。
いつもの焼酎が、いつも通りおいしい。何気ない事実の裏には、熱くストイックに、おいしさを守り続ける人々がいた。

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