裏切ってはいけない。守るだけでもいけない。その高い壁が、「志比田工場 黒霧島原酒」をつくった。
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リニューアルとして始まった開発。
黒霧島の名に恥じない質を追求した日々があった。
2022年2月、「志比田工場 黒霧島原酒」が発売された。
企画開発に関わったブレンダー課主任の黒木俊行、企画室 商品開発課の堀内美咲が、この一本のボトルに込めた思いを語ってくれた。
そもそも「原酒」というのは、蒸留後に一切のものを加えず、かつアルコール分が36%以上のものを指す。
水はもちろん、別銘柄の焼酎とのブレンドもしていない。濃縮された味の個性を楽しむことができるのが特長だ。
霧島酒造では唯一の原酒商品として、『霧島「志比田工場原酒」』を1996年から約25年間販売してきた。
この商品は、霧島酒造直営の観光施設「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」でも一番人気の商品。
今回登場した「志比田工場 黒霧島原酒」は、実はこの商品のリニューアルから始まったという。
「リニューアルを検討したときに私たちの中にあったのは、黒霧島や霧島酒造の商品を好きでいてくださるお客様にとことん向きあった商品開発をしたい、ということでした」と堀内は語る。
こだわったのは、どうしたらファンの方に喜んでもらえるか。
商品の軸がそう決まると、開発は一気に動き出した。
まず見直したのは、そもそもの枠組みを外すことからだった。
「原酒のリニューアル」ではなく「ファン向けの新商品」と考えることにしたのだ。
そこで、原酒の制約に捉われずに、改めて酒質の検討から始めた。
ブレンダー課と商品開発課で何度も試作・利き酒・意見交換を繰り返して開発を進め、結果的に一番コンセプトに合った味が出たのが黒霧島の原酒だった。
比較対象の旧商品があるという状況ならではの難しさも常にあった。
「旧商品から新商品に変えるにあたっては、品質面、コスト面、ブランド面で良い方向に変わっているかなど、常に旧商品との比較が伴うため、結構シビアなんです。
ゼロからスタートする新商品開発とは違って、すべてが上位互換でなければならない。
それを満たすために、チーム内で新商品に関わる要素を細かく分析しながら進めてましたね。」
当時の苦悩を振り返りながら黒木は語った。
その厳しさこそが、満足のいく仕上がりへと繋がっている。
「旧商品は芋の優しい香りがありながら、パンチがあって、少し辛みのある酒質だったんですが、新商品は黒霧島らしさとともに、カラメルのような甘い香り、なめらかで芳醇な味わいがふんだんに出るように、原酒選択、酒質調整を行いました。正直、とても満足いく仕上がりです」。
おすすめの飲み方を聞くと、原酒そのままの味わいを堪能できるロックや口当たりの良いパーシャルショット(※)だと教えてくれた。
後者は、アルコール度数の高いお酒を冷凍庫で冷やし、アルコール感を抑えて、よりとろりとした感覚を楽しむ飲み方のことだ。
ラベルやボトルのデザインにも、いたるところに思いが詰まっている。
原点や特別感を伝えるためにも、霧島酒造をはぐくんだ風土を感じながら飲んでもらえるつくりにしたのだ。
ラベルの色味は重厚感のある深緑で、原酒の濃醇な味わいを表現している。
象徴的にデザインされているのは、二代目社長江夏順吉が自らの集大成として建設した志比田工場の外観だ。
業界に先駆けて当時最新鋭の設備を導入した。
工場がある志比田町を含め、霧島酒造は地元である都城の土地や自然に支えられてきた。
この土地や自然への敬意も込めてラベルのモチーフとして取り入れている。
ラベルに入った文字は、志比田という土地に並々ならぬ思いを注いできた順吉直筆のものだ。
ボトルの形状にもちょっとした気遣いがある。
注ぐときに持ちやすいよう、底の部分に小指を掛けることのできるくぼみがあるのだ。
これは創業者の名を背負う商品「吉助」にも採用されている。
頻繁に飲んでくれる人のために考え抜いたアイデアだ。
小さな工夫を随所に詰め込んで、この商品はできている。
これまで支え続けてくれたたくさんのファンのために生まれた「志比田工場 黒霧島原酒」。
全く新しいポジションで始まったこの焼酎が、これからの霧島酒造にどんなきっかけを生み、どんな影響を与えていく存在となるのか。
期待は高まる一方だ。
※ パーシャルショットをお試しいただく際の注意点
- 本商品容器のまま冷凍庫に入れると、瓶が割れたり内容物が漏れる可能性がございます。必ず冷凍対応の保存容器に移し替えてお楽しみください。
- 焼酎を冷やした場合、まれに沈殿が見られることがあります。「おり」と呼ばれる焼酎のうまみ成分です。品質には問題ございません。
- アルコール度数が低い商品は内容物が凍結する可能性があります。
※20歳未満の方へのお酒に関する情報の共有はお控えください。