琉球王国時代から伝わる宮廷料理
滋味深い琥珀色のスープ
イラブーはウミヘビの一種で正式名称は『エラブウミヘビ』。イラブーの燻製を使った汁物料理が『イラブー汁』で、その起源は琉球王国時代(1429〜1879年)の宮廷料理だ。当時は宮廷の薬膳料理でもあり、中国からの使節・冊封使(さっぽうし)をもてなすための料理でもあったため、庶民が口にすることはできなかったという。
手間をかけて作られたイラブーの燻製をきれいに洗い、アクを取りながらじっくりと煮込んでいくと、徐々にイラブーのエキスが溶け出していく。中でも途中で浮かんでくる脂に、イラブーのエキスが一番詰まっているとのことだ。そして、身がやわらかくなる頃、濃厚な琥珀色のスープができあがる。ここにカツオ出汁、昆布出汁、豚出汁などを加えることでさらに深い味わいとなる。調味料は味を整えるという意味合いの塩だけということが多い。一緒に添えられる具材の定番はテビチ(豚足)と結んだ昆布だ。
イラブーの風味とともに様々な出汁が重なり合った味わいは奥深く滋味深い。表面が漆黒に光る身は肉のような食感だ。昔から滋養強壮に効果があることが知られ、沖縄では「『イラブー汁』を飲むと半年の元気をもらえる」とも言われている。
一般的に『イラブー汁』はイラブーの燻製を使ってつくる。琉球王国時代、イラブー漁は久高島だけで許され、イラブーの燻製づくりも久高島で行なわれていた。現在も久高島では伝統的な漁と燻製づくりが行なわれている。
那覇の公設市場や乾物店では、店頭に吊るされたイラブーを見ることができる。
■食事処 とくじん
http://www.kirishima.co.jp/aji/2011/winter/29/02.html
沖縄では豚の三枚肉などをゆでたゆで汁が豚出汁としてよく使われる。ゆで汁を冷まして固まった脂分(ラード)を取り除くと、さっぱりした味わいになる。
イラブーの燻製をよく洗った後、下ゆでしてアクを取り除く。燻製のやり方によって、洗い方を変える必要があるようだ
下ゆでしたイラブーの燻製を適当な大きさに切り、じっくりと煮込む。カツオ出汁や豚出汁を加え、テビチや昆布を添える
イラブーの燻製から出るスープに、カツオ出汁、昆布出汁、豚出汁なども加えるため、塩だけて味付けされることが多い
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