カツオの腹皮 | 九州の味とともに冬

日本一のカツオ節の産地・枕崎で
古くから親しまれる濃厚なカツオ料理

“腹皮”と言っても“腹の皮”のことではない。マグロで言えばトロの部分のことを枕崎では “腹皮”と呼んでいる。『カツオの腹皮』は、カツオの腹の身の部分。カツオの部位の中で一番脂がのっているところだ。

江戸時代から、近海でのカツオ漁とカツオ節作りで栄えていた港町・枕崎。今でも多くのカツオが揚がり、カツオ節の生産も盛んで、生産量は全国１位を誇っている。実は、カツオからカツオ節の原料となる身の部分を取り除いた後の、残った部分が『カツオの腹皮』なのだ。枕崎では、手軽に手に入る食材として、昔から焼酎の肴やごはんの友として親しまれている。現在では、カツオ節用ではなく、刺身用のとても鮮度の良い『カツオの腹皮』も食べられている。

料理法として一般的なのは塩焼き。表面をきれいに洗った後に塩をふって焼く。火を通し過ぎると身が固くなってしまうので、焼き加減が大切だ。アツアツの身をほぐして食べれば、カツオの旨味が凝縮された味わいや、弾力があり、脂がのった身の旨味を楽しめる。塩焼きの他には、天ぷらや唐揚げ、煮物や干物などにしても美味しい。

カツオ

■カツオについて
枕崎港に揚がるカツオについて、枕崎市漁業協同組合の総務部特販課課長・揚野功さんにお話をうかがった。

「カツオは回遊魚で世界の海に分布しています。黒潮の流れにのって北上する上りカツオは青森沖まで行った後、戻りカツオとなって戻ってきます。枕崎の南の海はカツオたちの通る場所なので、昔からカツオ漁が盛んで、カツオ節も盛んに作られていました。その加工場は400年くらい前からあり、今もカツオ節を作っているお店は70軒ほどありますよ。枕崎はカツオ節の有数の生産地です。

枕崎港に揚がるカツオ

現在、全国で年間60万トンほどのカツオの水揚げがありますが、その内、枕崎では年間8万トンの水揚げがあります。近海のものもありますが、12月〜6月は南方のマーシャル諸島あたりで獲ったものが水揚げされます。遠洋で獲られたものも、冷凍技術が進歩していますので、鮮度は抜群です。刺身でも食べられますよ。そして、私たちが『枕崎ぶえんカツオ』と呼んでいるものは、一本釣りをし、さらに『B-1』と呼ぶ船上で活き絞めし、急速冷凍する、独特のカツオ臭さがない極上品です。これは年間100トンくらいしか揚がりません。現在流通しているのはマガツオ、ハガツオが中心ですが、絞める方法や冷凍する方法によって全然違う味わいになりますから、ひとくくりに“カツオ”とは言えないですね」。

さて、店で売られている腹皮には形が三角形のものとスティック状のものがある。その違いについても教えていただいた。
「カツオ節用のカツオは、加工場で手作業でさばかれます。その時カツオ節に使わない部分、つまり腹皮は三角形になります。刺身用のカツオは電動糸ノコのような機械で切りますが、その時、刺身として食べない腹皮はスティック状になるというわけです。ちなみに、カツオ節用のカツオは脂があまりのっていないほうがいいんです。けれど、そのようなカツオでも腹皮には脂がのっていますね。腹皮は塩焼きが一般的な食べ方ですが、『B-1』処理された新鮮な腹皮は、刺身でも食べられます。スライスして軽く湯引きして酢みそをつけて食べると美味しいですね」。

■枕崎市漁業協同組合
枕崎市折口町66
0993-72-2113

■枕崎市かつお公社
カツオ節や佃煮、腹皮、無添加のカツオフレーク、刺身やタタキにいたるまで、様々なカツオの加工品を製造販売。こちらでは、カツオの加工作業を見学することができるので、カツオのどの部分が腹皮なのかということがよく分かる。