炎の中で燻し焼かれる地鶏もも肉の
燻香とプリッとやわらかい歯応えを
炭火に鶏の脂を入れて炎をあげ、その中で、塩をかけた鶏もも肉を一気に燻し焼く。発祥は定かではないが、宮崎では古くから続く料理法だ。鶏ももを骨付きのまま焼く方法(焼きあがった後に切ることもある)と、ぶつ切りにしてから焼く方法がある。
味付けや焼き方に工夫が施されていることはもちろん、料理人が素材にこだわり、厳選していることは言うまでもない。現在、宮崎の料理人の信頼を得ているのが、『みやざき地頭鶏(じとっこ)』。宮崎や鹿児島に生息していた『地頭鶏』を品種改良し、さらに育てる人たちが工夫をして生まれた地鶏で、やわらかで弾力ある肉質が特徴だ。
焼き上げたばかりのものを口に入れれば『プリッ!』。決して、地鶏と聞いて連想しがちな『コリッ』ではない。はずむような弾力があり、ジューシーでやわらかい。その食感とほどよい薫香の中にある肉の甘味を引き立たせるため、味付けは塩のみ。ピリッと辛い薬味のゆず胡椒は名脇役。そして、必ず添えられるキュウリを時折かじれば、次の肉がまた旨くなる。宮崎で愛される20度の芋焼酎のロックがとても合う料理だ。
みやざき地頭鶏事業協同組合を尋ね、経営販売主幹・西本孝裕さんに『みやざき地頭鶏』についてお話をうかがった。
●みやざき地頭鶏の系統
『地頭鶏』(オス)と『劣性白色プリマスロック』(メス)から生まれるヒナのオスは『F1』と呼ばれています。
このF1が『みやざき地頭鶏』の父鶏になります。
そして、『九州ロード』という品種のメスが『みやざき地頭鶏』の母鶏になります。
『地頭鶏』は、宮崎、鹿児島の旧薩摩領地で古くから飼育されていた在来種で、弥生時代からいたという文献も残っているようです。江戸時代、農家の方々が飼育しており、とても美味しく、地頭職に献上していたことからこの名前が付いたと言われています。昭和18年に国の天然記念物にも指定されています。
●『みやざき地頭鶏』開発の歴史
1985年に『地頭鶏』を元に地鶏の開発を始め、1990年に『みやざき地鶏』が生まれました。『みやざき地鶏』をさらに改良して2004年に生まれたのが『みやざき地頭鶏』なのです。
●飼育方法
1平方メートルあたり2羽以下で平飼い、放し飼いにしています。オスは120日、メスは150日飼育して出荷です。JASが定める“地鶏”の規格では、“28日齢以降1平方メートルあたり10羽以下で飼育”“28日齢以降平飼い”“ふ化日から80日以上飼育”と定められているので、『みやざき地頭鶏』は規定よりものびのびと育てられていることが分かります。そして、飼料は生産者の方々がそれぞれに工夫され、こだわり抜いたものを与えています。
●生産高
2011年度の『地鶏』生産1位は『名古屋コーチン』、2位が『みやざき地頭鶏』、そして、3位が『比内地鶏(ひないじどり)』となっています。2012年、『みやざき地頭鶏』を取り扱っている店舗は200以上で、食べられる飲食店はさらに増えています。2012年度は60万羽生産体制ですが、今後は90万羽生産体制を作りつつあります。体重の平均は、オス3.9kg、メス3.1kg、そのうち肉部分の重さの平均はオス2.5kg、メス1.3kgです。
●味の特徴
『みやざき地頭鶏』は『AAA(トリプルA)』〜安全・安心・愛護〜を実現している地鶏です。生産者の苦労もあり、すばらしいものになっています。やわらかさの中にも適度な歯応えがあること、臭みが少なくて食べやすいこと、鶏肉の旨味が十分なことが味の特徴としてあげられます。一度食べてくださった方がまた食べてくださったり、周囲の方に宣伝してくださったりして、だんだんと広まっていったのだと思っています。ちなみに、2月10日(じとう)が『みやざき地頭鶏の日』なんです(笑)。
骨付きのまま焼く店もあれば、ぶつ切りにしてから焼く店もある。ぶつ切りにする店は、ぶつ切りの大きさにまで気を配っている
味付けのベースとなるのは塩。作り手が厳選した塩や、特製の炒り塩を使っている。薬味として、ゆず胡椒がつく場合も多い
単純に炭火の上の網にのせて焼くわけではない。炭火に鶏の脂を入れることで炎を大きく立ち上げ、一気に焼き上げる
3本の中から飲みたい一本をお選びください。
3種類の飲み方からおすすめを一つお選びください。