九州の味とともに 夏

福岡 あちゃら漬け

福岡のお盆に食べられてきた
時間と手間をかけた野菜の甘酢漬け

『あちゃら漬け』は福岡の夏、特に人が集まるお盆の時期によく食べられてきた郷土料理。まず、大根、ゴボウ、レンコン、昆布、キクラゲ、凍りこんにゃくなどを切り、下ゆでや塩揉みをして下ごしらえする。下ごしらえした具材を唐辛子と一緒に塩、砂糖、酢、出汁などを合わせた甘酢に漬ける。そのまま一晩ねかせて具材と甘酢が馴染んだらできあがり。具材の種類は地域や家庭によって異なるが、具材の数だけは奇数と決まっているのだそうだ。

爽やかな甘みと酸味、唐辛子のほのかな辛味の中に具材それぞれの旨味が広がる。“和風ピクルス”ともいえるさっぱりとした味わいは、焼酎のつまみとしても最高だ。

ユニークな響きを持つ名前については、ポルトガル語で“漬ける”を意味する“アチャール”が語源であると言われている。また、あちゃら=あちら=外国ということで、“南蛮風の漬け物”を表しているという説もある。

見た目、味わいともに素朴でなつかしさを感じさせるが、具材をそれぞれ別々に下ごしらえしなければならないなど、実は時間と手間をかけて作られる『あちゃら漬け』。昔も今も、作り手の愛情が込められている家庭料理だ。

■『あちゃら漬け』の伝播

漬物(ピクルス)はインドでは『アチャール』、ネパールでは『チャーレ』、フィリピンやインドネシアでは『アチャラ』、その他アジア圏内で『チャーレ』や『オチョール』と呼ぶ国もある。いずれもポルトガル語で“漬ける”を意味する“アチャール”が語源であると考えられている。日本にどのようにして伝わったかの詳細はわからないが、アジア地域で共通する名前の料理があることからポルトガルから伝わったという説が有力だ。

「あちゃら漬け」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
具材

大根、ゴボウ、レンコン、昆布、キクラゲ、凍りこんにゃくなどがよく使われる。具材の数は奇数と決まっている

甘酢

塩、砂糖、酢、出汁などを合わせて作る。二杯酢、三杯酢などとは少し異なり、『あちゃら漬け』用の味わいだ

作り方

切った具材をゆでるなど下ごしらえした後、唐辛子と一緒に甘酢に漬ける。一晩ねかせることで具材と甘酢の味が馴染む

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