九州の味とともに 夏

福岡 ごぼう天うどん

やわらかな麺とごぼうの歯応えを
すっきりまろやかなつゆと一緒に

福岡・博多の食と言えばラーメンがよく知られるが、実は古くからうどん文化も花開いている。鎌倉時代に聖一国師(しょういちこくし)が開いた福岡市博多区の承天寺には、『饂飩(うどん)蕎麦発祥之地』という石碑が建っているほどだ。

伝統的な博多のうどんの特徴は、まず麺がやわらかいこと。生の麺をいったんゆでておき、注文が入ったら温めてすぐに出すという料理法をとる店が多い。これは待つ事があまり得意ではない、かつての博多っ子のために考えられたもの。

つゆの特徴は、出汁の材料として昆布やカツオ節に加えて、イリコ、サバ節などもたっぷり使うこと。この出汁に薄口醤油などで味付けし、まろやかで深い味わいのつゆとなる。

そして、博多のうどんを代表するトッピングが『ごぼう天』。ごぼうの薄切りをかき揚げにしたもの、ささがきをかき揚げにしたもの、薄切りを一枚ずつ揚げたものといった種類がある。福岡では『ごぼ天』と呼ばれることも多い。ちなみに、魚のすり身を丸くし揚げた『丸天』も、博多のうどんには欠かせないトッピングだ。

麺のやわらかさ、衣のサックリ感、ごぼうの歯応えを、すっきりまろやかなつゆが包み込む『ごぼう天うどん』。すべての世代に愛されている博多の味だ。

承天寺

■承天寺
承天寺は、1242年に宋の貿易商であった謝国明が建立し、聖一国師が開いた禅宗寺院。

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「宋で修行をした聖一国師が1241年に帰国した際、たくさんの品物を持ち帰ってきました。当時、中国は最先端の国でしたから。その中の一つが『水磨の図』。水車を使い石臼を回して粉をひくという機械の設計図です。それまでにも粉がひかれていたとは思うのですが、とても手間のかかる作業だったことでしょう。この機械により、製粉技術が普及し、日本全土に麺食文化が広がったと言われています。一部の人しか食べられなかった物が、多くの人も食べられるようになったのです。そういう意味合いもあって、承天寺は『饂飩蕎麦発祥之地』なのです。聖一国師は、麺だけではなく、お饅頭など、粉もの文化にも多大なる貢献をしていることにもなりますね。“粉文化発祥の地”と言えるかもしれません。今の時代と違い、当時は宋に行くのは命がけのこと。食生活を含め日常生活すべてが修行という中で、多くのものを学び、命がけで持ち帰ってきました。その根源にあるのは、“人を救いたい”という心、“施し” の心だったのです」。

■承天寺
福岡市博多区博多駅前1-29-9

『饂飩蕎麦発祥之地』の石碑
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「ごぼう天うどん」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
麺

小麦粉、塩、水で作られた麺は一度ゆでておき、注文が入ったら温めて提供する。そのため、やわらかな食感を持つ

つゆ

昆布、カツオだけではなく、イリコ、サバ節なども出汁作りに使う。薄口醤油で味付けしたつゆはさっぱりしているが風味豊か

ごぼう天

薄切りをかき揚げにしたもの、ささがきをかき揚げにしたもの、薄切りを一枚ずつ揚げたものなどがあり、博多のうどんに欠かせない

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