貴重な海の魚を食べ尽くす
独特の香りと食感を楽しむ珍味
風情ある街並みもあり、“大分の小京都”とも呼ばれている竹田市(たけたし)。この竹田に江戸時代から伝わると言われている、海の魚を使った郷土料理が『頭料理』だ。
周囲を山で囲まれ、海から遠い竹田では、昔は海の魚はとても貴重なものだった。『頭料理』は、臼杵(うすき)や佐伯(さいき)から馬の背にのせられ運ばれてきた魚を、余すことなく使おうという想いから生まれた。普通は食べることのない、魚の頭や内臓、エラまでを料理する。小さい魚はすぐに傷んでしまうので、使っていた魚はニベ、アラ、ハタ、クエなど、白身の大型の魚。それは今も踏襲されている。
10〜60kgもの魚をさばき、骨身、正身、尾身、肝、浮き袋、胃袋、腸、白子、真子、ホホ肉、クチビル…十数種類にも及ぶ部位に分け、塩をしてゆでたり、塩水でゆでる。程よいゆで加減にするため、部位ごとにゆで時間を変えることが必要だ。ゆでたものを冷水で冷ました後、食べやすい大きさに切って盛りつける。ネギや、もみじおろしの薬味も合わせて、三杯酢で食べる。竹田特産のカボスが添えられることも多い。
コリコリ、プニュ、トロリなど、部位ごとに違う食感がおもしろい。そこに独特の香りや味わいも加わり、焼酎のつまみには最高の一品だ。
■竹田市について
竹田市商工観光課の高本輝美さんにお話をうかがった。
「竹田といえば、瀧廉太郎が『荒城の月』のモチーフとした、岡城(おかじょう)がよく知られています。岡城自体の歴史は鎌倉時代が始まる前からと言われていますが、竹田が城下町として賑わい始めたのは江戸時代から。今から400年くらい前のことです。『頭料理』は、江戸時代の初めに生まれたと言われています。竹田は山で囲まれ、海の魚が貴重だったことから生まれた料理ですね。交通の便は瀧廉太郎(1879年〜1903年)の時代でも不便だったようで、大分から竹田まで馬車で3日かかったという記録も残っていますよ。
竹田では『頭料理』を食べられるお店や宿がいくつもありますが、準備に手間がかかり予約が必要なことから、メニューには書かれていないこともありますね。『頭料理』は三杯酢で食べますが、三杯酢にカボスが入っていたり、料理にカボスが添えられていることが多いです。カボスは竹田の特産品。大分県はカボスの生産量日本一で、生産量県内1位は、毎年、竹田か臼杵(うすき)なんですよ」。
ニベ、アラ、ハタ、クエなど、海底近くに棲息する大型で白身の魚。身だけでなく、ホホやクチビルなど頭部分、内臓も使う
部位ごとに分け、それぞれに塩をしてゆでたり塩水でゆでる。冷水で冷ました後、切って盛りつける
ネギや、もみじおろしなどの薬味と一緒に、三杯酢で食べる。添えられていることが多い、竹田特産のカボスを絞って食べても美味しい
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