タレ(甘酢)とタルタルソース
甘酸っぱさに包まれたやわらかな鶏肉
小麦粉などをまぶし、卵液に通してサクッと揚げた鶏肉を、タレ(甘酢)に数十秒ほど漬け込んだ後、タルタルソースをかける…。昭和30年代に宮崎県延岡市にあったレストランのまかない料理にルーツを持つと言われる『チキン南蛮』。時の流れとともに提供する店も増え、家庭にも広まり、宮崎県を代表する郷土料理となった。今では、スーパー他でチキン南蛮用のタレも売られているほどだ。延岡にはチキン南蛮で街を元気にしようという街おこし団体『NANBANTRY(延岡発祥チキン南蛮党)』も生まれている。
甘酢が適度に染み込んだ衣の甘酸っぱさに、タルタルソースのコクのある甘味と酸味がからまる。この味わいが、やわらかくてさっぱりとした味の鶏の胸肉を包みこんでいる(最近では、よりコクのある味を目指して脂肪分を多く含むもも肉を使う店も増えている)。作り手が工夫を凝らす甘酢とタルタルソースは、あっさりしたもの、酸味の強いもの、甘めのもの、ピクルスではなくきゅうりを使うものなど様々な味わい。それら2つが奏でる味のハーモニーも千差万別だ。
世代に関係なく宮崎の人々みんなに愛されている『チキン南蛮』。ごはんにもよく合うが焼酎の肴として楽しむ宮崎人も多い。
『NANBANTRY』は、『延岡発祥チキン南蛮党』のこと。2009年7月8日(なんばんの日)に立ち上がった「延岡の街をもっと元気にしたい」という民間の街おこし団体だ。
事務局をつとめるのは延岡観光協会。観光協会の稲田潤さんにお話をうかがった。
「チキン南蛮のルーツは延岡にあった洋食屋『ロンドン』だと言われています。そこのまかない飯に、鶏肉を揚げたものに甘酢をかけたものがあったようなのです。その店で修行したり、洋食の基礎を学んだのが『直ちゃん』創始者の後藤直さんと『おぐら』創始者の甲斐義光さんだったんですね。どちらのお店もチキン南蛮でよく知られていますが、私たちは2つのお店はダブルスタンダードと考えています。いずれにしてもそのルーツは延岡にあることは間違いないですね。そして、おぐら出身の料理人が独立するなどして、チキン南蛮は広がっていったようです」。
延岡の街を歩くと、多くの飲食店の前に『チキン南蛮』ののぼりを見かける。
「延岡ではチキン南蛮を出す店はとても多いですよ。うどん屋でも寿司屋でも居酒屋でもいろんなところで食べられます。延岡ではあまりにもポピュラーだったので、今まで何もしていなかったのですが『NANBANTRY』を設立してから、のぼりを立てたりしてPRしています。チキン南蛮マップもつくったのですが、そこに載せている店だけでも現在54軒。延岡は企業城下町で、飲み屋の数がかなり多いのですが、よく食べられていたのは地鶏のもも焼きなど、鶏のもも肉を使った料理。余った胸肉を有効に使えないかということで居酒屋も出すようになったようです。居酒屋ではほとんど出していて400〜500円くらい。みなさん、酒の肴にしていますね」。
では、スタンダードなチキン南蛮とはどんなものなのだろうか?
「公式レシピというのがありまして、『小麦粉などの粉と卵だけで鶏肉を揚げて、30秒甘酢に浸して染み込ませ、好みでタルタルソースをかける』というものです。延岡のチキン南蛮はジューシーで衣もふわっとしています。唐揚げにタルタルソースがかかっているようなものもありますが、それは本場延岡のものとは違います。ぜひ延岡に食べに来ていただきたいですね」。
鶏の胸肉を使うのが基本。やわらかさや味わいのため、生後何日の鶏のものを使うなど細かに決めている店も多い
鶏胸肉に衣をつけて油で揚げる。小麦粉、片栗粉など鶏肉にまぶす粉の種類、また油の種類などに工夫がなされている
タレとタルタルソースはチキン南蛮の味を決める重要なもの。各店独自の自家製で、マヨネーズからつくる店も多い
3本の中から飲みたい一本をお選びください。
3種類の飲み方からおすすめを一つお選びください。