独特の香り、シャキッ、ピリッ
島人の宴に欠かせないつまみ
『島らっきょう(塩漬け)』は、公設市場など店先で売られていると、少し離れたところからでも強い香りが漂ってきてすぐにわかる。独特の香りとともに、口にするとシャキッとした歯ごたえとピリッとした辛みが広がり、焼酎のつまみにぴったりだ。
『島らっきょう』は沖縄で育つらっきょうのこと。
主に、北部の離島である伊江島(いえじま)や南部の糸満市(いとまんし)で栽培されている。伊江島産のものは特に香りや味わいがいいということで、料理人たちに重宝されているようだ。
形は通常知られているらっきょうより、小ぶりで細長い。甘酢に漬けるらっきょう漬けとして食べることはなく、塩漬けが沖縄での食べ方。根と緑色の茎を取り除き、白い部分の薄皮をむいて塩をまぶしてねかせる。塩の使い方、漬け方、ねかせ方などによって、作り手によって味わいが異なるところが奥深い。塩漬け以外には天ぷらにしたり、炒めものにしたりもする。
ほどよくねかせた『島らっきょう(塩漬け)』には削り節がふりかけられる。そのまま食べても、少し醤油をかけても美味。島人(しまんちゅ/沖縄に暮らす人々)にとって、『島らっきょう(塩漬け)』は宴の最初の一品として、なくてはならないつまみだ。
『島らっきょう』の栽培が盛んな伊江島(国頭郡伊江村)を訪ね、JAおきなわ伊江支店園芸生産組合組合長・名嘉元精雄(なかもとせいゆう)さんと、JAおきなわ伊江支店らっきょう生産部会部会長・玉城博文さん(たましろひろふみ)さんにお話をうかがった。
●『島らっきょう』の栽培時期
「7月、8月の夏場に畑作りをして、植え付けは9月から。“たね”と呼んでいますが球根状のものを1株ずつ手植えしていきます。1株が10株ほどに増えますね。堆肥は与えますが、水は自然のままの路地栽培です。動物は来ないのですが、葉を食べる虫が増えると大変です。蝶がとびまわっているのはのどかに見えるけど、それは虫がいっぱいいるということで、私たちには迷惑なんですよ(笑)。植え付けからだいたい3ヶ月くらいで出荷できます。植え付けの時期を変えることで、12月から6月くらいまで出荷できますね。そして6月くらいに次の植え付けのための“たね”を確保しておきます。『島らっきょう』は連作できないので、さとうきびと交互に栽培していますよ」。
●収穫と出荷について
「収穫は特殊なクワで掘り起こします。これも手作業することが多いですね。収穫した『島らっきょう』はその場で根と緑色の茎を切り落とします。集荷場に集め、きれいにふきあげて500gの束にして出荷していますね。旬の時期は1月末〜4月でしょうか。5月になると少しかたくなってきますね」。
●伊江島の環境について
「伊江島の土壌は『島尻マージ(古代の珊瑚の化石である琉球石灰岩の風化作用によって生まれた土壌)』と呼ばれるものです。赤褐色でとてもやわらかく水はけがいい土なので、“たね”を深植えすることができるんです。他のところで深植えすると“たね”が窒息してしまうんですよ。そして、深植えができるから、白い部分も長くなるんです。土の中には栄養になるサンゴのかけらも入っていますし、海から吹いてくる風もいいんです。ミネラルたっぷりですね。伊江島の環境が美味しい『島らっきょう』を育てているのだと思います。伊江島では昔から栽培されていて、私たちは『島だっちょう』とも呼ぶこともありますね」。
●『島らっきょう』の食べ方
「天ぷらや炒め物など普通に野菜として食べていますね。中でも最高に美味しいのが塩漬けにしての一夜漬け。削り節をふりかけてね。新鮮なものが美味しいですから、私たちが一番美味しいのを食べていますね、お酒飲みながら(笑)。食べたら元気になりますよ!」
生の『島らっきょう』の根元を切り落として、薄皮をむく。緑の茎も切り落として長さをそろえる
塩をまぶして軽くもみ、ほどよくねかせる。塩は沖縄産の塩が使われることが多い
塩漬けと並んでよく食べられているのが『島らっきょうの天ぷら』。その他、チャンプルーなどの炒め物に使われることもある
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