さつまいもが育てた黒豚の甘味と旨味
とろける味わいをいただく鍋料理
鹿児島では400年以上も前から豚を家畜として飼育していたという記録が残っており、そのルーツは沖縄の島豚であると言われている。明治期以降から鹿児島の豚とイギリス原産の黒豚“バークシャー”との交配がすすめられ、現在の“鹿児島の黒豚”となった。 鹿児島という土地柄、以前よりさつまいもを飼料として与えているところが多いのも特徴の一つ。トンカツ、トンコツ(鹿児島版の角煮)等、様々な料理で食されており、黒豚は鹿児島を代表する特産品となっている。
鹿児島の黒豚の中でも、『かごしま黒豚』と認定されている豚は、飼料の配合、出荷時の肥育日数など厳しい規定のもと、高い品質の維持を続けている。
黒豚本来の美味しさを一番堪能できるのが『黒豚しゃぶしゃぶ』。肉を出汁(スープ)にくぐらせていただけば、口の中でとろけるような赤身(肉の部分)の食感と甘味…。鹿児島では『白身』と呼ばれる脂身もまた、甘くやわらかい。肉をくぐらせる出汁、つけダレ、薬味…各店独自の工夫が、黒豚の味わいをさらに引き立てる。そして、黒豚の旨味がとけ込んだ出汁は、最後に麺や雑炊にして残さずいただきたい。
鹿児島の黒豚、『かごしま黒豚』について、鹿児島県農政部畜産課にお話をうかがった。
「約400年前に島津18代当主・家久によって、琉球から移入された豚が鹿児島の黒豚のルーツと言えます。その後、鹿児島で飼育されるようになりました。明治時代になりイギリス原産の黒豚・バークシャー種との交配により改良が進みました。昭和30年代までは、鹿児島県の豚と言えば黒豚だったのですが、昭和40年代後半から、産子数が多くて成長も早い白豚が年々増えていきました。そうして昭和50年には、鹿児島県の豚出荷頭数の中で黒豚の占める割合は1.6%にまで落ち込んでしまったのです」。
そんな状況の中、黒豚を守ろうとする人たちが現れた。
「黒豚は美味しいんだ、残さなくてはいけないんだという動きが生まれ、その想いを県がバックアップしていったのです」。
徐々に頭数も増えていくなか、鹿児島県産黒豚の中でも、より一層の品質向上と銘柄確立を目指す生産者が集まり、「鹿児島県黒豚生産者協議会」が設立されました。この協議会会員の生産する黒豚は、一定の厳しい基準のもとで生産され、県が指定するかごしまブランド産品、「かごしま黒豚」として流通しています。その基準とは例えば、
などだ。
「かごしま黒豚」は本物を確実に消費者に届けるため、協議会の指定する販売指定店では「かごしま黒豚証明書」が表示されており、この証明書は1999年に商標登録されています。現在は鹿児島県の豚出荷頭数の約20%が黒豚で、黒豚の中の半分が『かごしま黒豚』ですね」。
使う部位、スライスする厚さで味わいも違う。より美しく見せるため、盛りつけ方にも各店の工夫がある
肉をくぐらせる出汁(スープ)は、一般的には昆布出汁が多いが、ここにも各店の個性が表れる
何もつけなくても美味しいのが鹿児島の黒豚。黒豚そのものの味を伝えるため、各店は特製のタレを準備している